2020年4月22日(水)

■<新型コロナ>いわきタクシーグループ 従業員の生活守る決意 社内に返済猶予の貸付

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、いわき市などでタクシーや貸し切りバス事業を展開する「いわきタクシーグループ」(本部・小名浜字上町)は22日から、従業員に向けた新たな貸付制度を設けた。タクシーの乗務員は歩合制であり、新型コロナウイルスの影響によって、利用者減がそのまま給与に響くため、緊急対応策として、最大20万円までを1年間返済猶予で貸し付ける。門馬成美代表が同日、いわき民報社などの取材に応じ、異例の取り組みを始めたきっかけについて語った。

「いままで社員には、頑張ってきてもらった。社員とその家族に、喜びと安心感を与えることは経営者の責任と考えている」。門馬代表は新たな貸付制度の意図をこう説明する。

いわきタクシーグループ全体として、4月のタクシー売り上げは前年対比で、昼は6割減、夜は7割減。21日から始まった県の休業要請を受け、さらに落ち込むことは避けられない。貸し切りバスに至っては、東京電力の社員送迎と、原発事故による帰還困難区域の一時帰宅以外は、開店休業状態に等しく、バスの運転手を配置転換している。

厳しい現状だが、門馬代表は「解雇や休業といった選択肢はない。遺恨を残すようなことはすべきではない。散るならば、社員と一緒だ」ときっぱり。労使が一体となって、この難局を乗り越える気概を持つ。

福利厚生の一環として、従来から10万円までの貸付制度があったが、いままでは借りた翌月から返済が発生した。今回は1年先送りの上、社会情勢によっては延長も検討する。対象はグループ内すべての約210人。希望する従業員は、総務部門による簡単な審査を経て、早ければ即日、遅くとも3日以内に現金を手渡す。なおギャンブル等には使えない。

こうした思い切った取り組みを可能としたのは、平時から危機に備え、売り上げの一部を蓄えていたためと明かす。「人間が病気になったときの輸血のようなもの」。先代に当たる両親の教えから、従業員を大切しながら、会社としての体力を確保してきた。

<地域に支えられてきた会社として>

門馬代表は「地域に支えられてきたことも大きい」とも指摘する。15日からはグループの報徳タクシーで、乗務員が買い物などを代行する「おつかいタクシー」をスタートさせ、17日からはグループ全体に広げた。(詳細は<こちら>)

県タクシー協会いわき支部長を務める立場として、市内外の各社にも、おつかいタクシーの考え方を伝えている。新型コロナウイルスが終息した後も、高齢者や子育て世代向けに続けていきたいという。

「みんなつらい時期だと思うが、一緒に乗り越えていきたい」と門馬代表。今後は不要不急の外出自粛や、県の休業要請に当たって、苦境に陥っている地元飲食店のため、何かしらの協力を進めたいとも話している。

写真は、新たな貸付制度について語る門馬代表=22日(クリックで拡大)

■本市の観光入込3年ぶり減 755万5942人

市は21日、令和元年の市内観光入込客数を発表し、755万5942人(前年比6・6%減)で、3年ぶりに前年を下回ったと明らかにした。主な要因として、いわきサンシャインマラソンの積雪による中止(同8万4458人減)、東日本台風など水害の影響(同28万2861人減)が挙げられる。

一方、平成30年と比較した場合、2年ぶりのいわきおどりなど好調な夏祭り(同12万3000人増)、市石炭・化石館「ほるる」の企画展来場(同6855人増)などによって、落ち込みに歯止めをかけた。

観光地点等別では、スパリゾートハワイアンズが163万9092人、市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」が147万4900人、夏祭りが61万3700人、ゴルフ場が56万7785人、道の駅よつくら港が46万5859人、いわきFCパークが30万216人などとなっている。

ただ、東日本大震災前の平成22年は1076万6595人だったため、引き続き観光需要の回復が求められているが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、さらなる減少が見込まれる。

■いわき市の繁華街 休業要請・営業短縮でひっそり

いわき市の繁華街は21日夜、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、同日からの遊興施設などに対する県の休業要請に加え、居酒屋含む飲食店の営業時間は午前5時〜午後8時(酒類の提供は同7時まで)とする求めによって、ひっそりとしていた。

平ではレンガ通りや、紅小路(並木通りから三本目)はじめ多くの通りで、シャッターを下ろしたり、明かりがついていない店舗が目立ったほか、小名浜のネオン街も営業を取りやめていた。

一方、平には午後8時以降も営業を続ける飲食店も。30歳代の飲食店主は「補償と言っても、10万円ばかりもらっても仕方がない。食べたいと思うお客さんがいる以上、お店は開け続けたい」と話していた。

写真は、ひっそりとする平・レンガ通り=21日午後7時2分(クリックで拡大)

■日本・千島海溝地震 津波などの試算 いわき市は最大7・7メートル

内閣府の有識者会議は21日、日本海溝・千島海溝沿いを震源とする巨大地震の被害想定を公表し、北海道から千葉までの太平洋に面する7道県について、津波の高さなどを試算した。

北海道や岩手県では最大30メートル弱の津波が押し寄せるといい、いわき市では久之浜地区で最大7・7メートルの津波に襲われるほか、小名浜港でも最大3・7メートルとなる結果が示された。

今回の想定に当たって、7道県での過去6千年間の津波の痕跡などを基に、起こりうる地震の最大規模を、日本海溝の三陸・日高沖でマグニチュード(M)9・1、千島海溝の十勝・根室沖でM9・3と推定している。

福島県の津波最大波や浸水域に関する地図は、<こちら=内閣府の公表資料より(PDF、1・2MB)>

■市議選 「9月6日告示―13日投開票」に

市選挙管理委員会は21日、任期満了に伴う市議選について、「9月6日告示―13日投開票」の日程で行うと明らかにした。市議の任期は9月30日までだが、連休などを考慮して日程を決めた。定数は37。立候補予定者説明会は7月上旬に開催予定。期日前投票は9月7〜12日とする。

最新の有権者数は27万2082人(男13万2984人・女13万9098人)。前回市議選(平成28年9月)の投票率は46・66%。