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片隅抄

2017.09.30

2017年09月30日(土)更新
ことしは『洟をたらした神』の著者・吉野せいの没後40年に当たる。それを記念し、来月7日から草野心平記念文学館で「吉野せい展」が開かれる▼今は住宅地になった好間町の菊竹山で夫の詩人三野混沌と貧しい開墾生活を送り、ゆっくり好きな本を読む余裕もなかったかつての文学少女に、混沌の葬儀のとき強く執筆活動を勧めたのが、その心平だった▼76歳にして脚光を浴びたせいは、それからわずか2年後に亡くなったが、出版された本と賞状を持って早く混沌に自慢したかったからではないか。土まみれになっていた皺だらけの手にペンを握らせた心平の慧眼に感服する▼心平はせいだけでなく、生前受け取った原稿料がたった1回しかなかった、という宮沢賢治を「異常な光を放っている天才」と評価し、埋もれていた作品を世に出したことで知られている。7歳年上の賢治にただの一度も会っていないのに。偉大な〝蛙の詩人〟は名プロデューサーでもあった。
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