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片隅抄

2011.01.28

2011年01月28日(金)更新
 英文学者・吉田健一の随筆に『昼間の火事』がある。神田神保町の行きつけのビアホールがもらい火で類焼するのだが、その場に居合わせた彼は、悠然とジョッキを傾けていた▼食通、酒豪として知られた吉田。神田界隈の大学で教べんを執ったあと、寛ぎや編集者との打ち合わせに、同店を利用するのが常だった。こちらは吉田ほど肝がすわってない。先日深夜、自宅付近で住宅火災があった▼寝入っていたが、消防車の行きかう様子に窓を開けると立ち上る炎が目に飛び込んできた。「パン、パン」とガラスの割れる音が響きわたり、事の重大さを実感。急いで家人を起こし、カメラ片手に現場に向かった▼日本海の珍味を好んだ吉田は、頻繁に山形県酒田市を訪れた。その同市も昭和51年に1人死亡、被災者3300人、1700棟以上を焼失した「酒田大火」に見舞われる。報を知った吉田は随分心配したという。寒の厳しい折、火の始末に十分気を付けたい。
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