2020年11月25日(水)

■湯本温泉郷に蔵造りカフェ誕生 貴重な史料公開にアートスペースでは個展も

常磐湯本町三函の湯本温泉郷に、アートスペースなどを併設した蔵造りのカフェ「備中屋本家斎菊」がオープンした。老舗旅館「ホテル斎菊」を切り盛りした嶋崎剛さん(62)が手掛ける多目的施設で、湯本の町並みを日本画で描き残すなど、画家としても活躍した曽祖父・斎菊勝之介さん(安政2年〜大正14年、享年70)の資料室のほか、イベントスペースも設けられ、過去・現在・未来が響き合う空間が、訪れる人を魅了している。

「斎菊」は江戸時代から続く湯治旅館として、嶋崎さんらが代々その看板を守ってきた。近年は利用客の減少により平成30年にのれんを下ろし、現在は別の経営者が引き継いだが、老舗の名前はそのまま残った。元々懇意にしていた備中(岡山県)からの客が多かったため、「備中屋」の屋号で呼ばれていたという。

勝之介さんは二代目で、経営の一方で日本画を学び、「東壷(とうこ)」の雅号で活躍。絵入りの「三函温泉由来記」「三函温泉変動記」などすべて一点もののため、長らく門外不出の家宝として保管してきたが、「地域にとって貴重な資料を後世に生かしてもらおう」と、カフェ資料館での公開を決めた。

地元のアーティスト・野島美穂さんの作品展が、来年1月17日まで開催中だ。また、アートと歴史を感じながらコーヒーやスムージー、デザートプレートを楽しめるのが老若男女を問わず人気を集めている。定休日は月、火、水曜(12月31日と来年1月1日は休業)。問い合わせは同カフェ=電話(60)8401=まで。

写真は、野島さんの作品の前に立つ嶋崎さん=24日(クリックで拡大)

■陶芸家・秤屋さん コロナ禍に癒しを 幅広い年代支持

ゆかりのある四倉町と東京都豊島区に窯を構え、本市と都内を行き来し精力的に作家活動を続けている陶芸家の秤屋苑子さん。震災後からは郷ケ丘二丁目にも窯を設けて教室を主宰し、市民にこれまで培ってきた技術を惜しみなく教授、土を触り無の境地で作品を仕上げていく過程が「癒やしになる」と、幅広い年齢層から支持を得ている。

受講しているのは市内外の中高齢が中心で、30歳代以下の若い世代も体験に訪れるという。受講者が事前に考案した器のイメージを秤屋さんが膨らませ、目標を共有化した上で手びねりで粘土を形成し、釉(ゆう)薬をかけて焼成する。作品を強引に修正することはなく、あくまで作り手の持ち味を尊重。熟練の技を要所要所で伝えつつ、器との“一期一会”の素晴らしさ、陶芸の奥深さをアドバイスしている。

秤屋さんは震災後、応急仮設住宅などで繰り返し陶芸教室を開き、被災者を元気付けてきた。「陶芸には癒やしの効果があり、メンタルケアの面からも見直されている。今年はコロナ禍もあり、不安を抱える市民の心を少しでも和ませることができれば」。ただ器を完成させるだけではなく、市美展への出展を視野に入れた作品づくりにも心掛けており、毎月2度、水曜の夜と日曜日の日中に教室を開催している。

写真は、秤屋さん(右)からアドバイスを受け、作品づくりに励む受講者(クリックで拡大)

■市職員人件費約5900万円削減 27日予定の臨時会に提出へ

市は24日、市長等特別職や市職員の期末手当を減額する条例4件をはじめ、補正予算などの15議案を発表した。27日に開会予定の市議会11月臨時会に提出する。議案15件のほか、専決処分について、報告1件も同臨時会に提出する。

一般会計補正の特別会計では、県人事委員会勧告に準じ、職員の給与改定等に伴い、職員人件費が5899万6千円の減額補正となる。このほか、議員報酬が2575万3千円、特別会計への繰出金1450万5千円が減額。一方、会計年度任用職員分の6311万6千円、企業会計への出資金・負担金1393万9千円、財政調整基金積立金2237万円を計上し、差額の17万1千円を補正額となる。

■母親暴行の50代息子を逮捕 いわき中央署 自宅で死亡確認

いわき市小川町の自宅で80歳代の母親を竹刀でたたくなどの暴行を加えたとして、いわき中央署は25日午前3時26分、同町上小川、無職の男(59)を暴行の疑いで逮捕した。母親はその後亡くなっており、同署では暴行と死亡に因果関係があるか、慎重に捜査を進めている。男は暴行した事実について容疑を認める供述をしている。

逮捕容疑によると、男は24日午前6時ごろ、自宅内で母親の背中を竹刀で数回たたいたり、頬を数回平手打ちするなどの暴行を加えた疑い。同署などによると、男が自ら110番通報し、犯行が明らかとなった。警察官が駆け付けたときにはすでに死亡していたという。

近所に住む女性(86)は「(男は)普段は穏やかな人で、(母親を)車で買い物に連れて行ったり世話をしていて、いい息子だと思っていたので驚いた」とこわばった表情をみせていた。男は母親と2人暮らしで、母親は4月ごろから足を痛め、同町の介護施設に通っていたとみられる。

写真は、男宅の家宅捜索=25日午前10時半ごろ(クリックで拡大)