2020年10月14日(水)

■新人作家を顕彰する「吉野せい賞」発表 3年連続で正賞・準賞とも該当なし

新人作家の優れた文学作品を顕彰する「第43回吉野せい賞」の受賞作が13日に発表された。3年連続で大賞の正賞と続く準賞の該当はなく、今回は中学生以下を対象とした「青少年特別賞」の該当者もなかった。奨励賞は会社員良川十鵜さん(51)=平成=の創作(小説)「ひまわりの家」、無職後藤恭正さん(62)=平下高久=の創作(小説)「心の端を一言に〜バラッド」、派遣社員渡辺啓明さん(68)=東京都西東京市=の創作(童話)「年寄り動物だけのサファリパーク」が選ばれた。

吉野せい賞は、小名浜生まれの作家で、好間の菊竹山で開墾生活を送った半生をつづった「洟(はな)をたらした神」などで知られる吉野せい(1899〜1977)をたたえている。今年は前回を15編下回る22編の応募となった。受賞作品は来年3月発行予定の総合文芸誌「風舎」第15号に掲載予定。

表彰式は11月7日午後1時から、市立草野心平記念文学館で開かれる。奨励賞のあらすじは次の通り。

【ひまわりの家】 幼児教育科を卒業し、24時間託児施設「ひまわりの家」に採用された啓は、幼い頃、母に両手の親指を裁ちばさみで切断されるという過去を持つ。施設に通う、あまり表情を表に出さない幸喜と、大手デパートに勤める母洋子のことが心に引っ掛かり、一歩を踏み出そうとした矢先、洋子が再婚し、幸喜も退所することを知らされる。傷を負った啓の魂が揺らぎながらも癒やされていく過程が丹念に描かれる。

【心の端を一言に〜バラッド】 昭和45年、春から小学6年生になる陽人は、常磐炭砿の炭住に暮らしている。4年前に母を亡くした後、父は再婚し、10歳年の離れた妹がいる。小学校の卒業近くに炭砿の閉山の話が持ち上がり、陽人は亡き母の実家のある川崎へ養子に行くことを決める。炭鉱業に斜陽が差す時代背景とともに、同級生の彩乃との清らかな交流を通して陽人の少年時代が追憶される。

【年寄り動物だけのサファリパーク】 年老いてサーカス団のお荷物になったピエロとゾウが団長に見捨てられ、住まいを探して彷徨(さまよ)い歩く。途中で、同じように人間によって住処(すみか)を奪われた、老年のカバ、ワニ、キリンと合流し、ついには定住する居場所を見つける。自活のためにそこをサファリパークとし、その後、子グマと老ライオンが加わった。母を探して園を飛び出した子グマがライオンに救出され、園に平穏が訪れる。

写真は、選考結果を発表する鈴木英司委員長=13日(クリックで拡大)

■避難先に恩返し 小高出身の柏さん 夏井川の美化に汗

各地で甚大な被害をもたらした東日本大震災や、昨年の東日本台風。県内でも多くの住民が避難生活を余儀なくされた。さらに、新型コロナの影響により始まった新しい生活様式の中で、人と人のつながりや絆を強く感じる機会がより多く見られる。平上片寄の無職柏庄二さん(73)もその1人だ。

柏さんは震災後、原発事故の影響で、南相馬市小高区から市内含む7カ所に避難し、避難先の1つだった平山崎地区の住民たちから親切を受け、その恩返しとしてごみ拾いや除草作業など、感謝の奉仕活動に尽力している。

目まぐるしい避難所生活の中、避難先の平高久地区や山崎地区民たちからは「仲良くやろうね」「頑張ってね」など温かい言葉をかけられ、差別も一切なく温かく接してくれたことに強く恩義を感じたという。風邪をひいたときは、心配して食事を持って見舞いに来てくれたり、晩酌時には出来たての天ぷらやお新香など料理を分けてもらった――と柏さん。地区民たちと家族同然の交流を深めていった。

娘たちのすすめで、今年7月から平上片寄の老人ホームで入居を開始。市に届けを出して「いわき市民」となり、同月下旬から毎日、雨や休日も関係なく環境美化活動を続けている。活動場所は、専称寺(平山崎)前の県道から、平下神谷の六十枚橋下の夏井川河川敷までの約2キロ。この範囲内での作業を終えると、また専称寺前に戻るという工程を繰り返している。

写真は、夏井川河川敷で除草作業に励む柏さん(クリックで拡大)

■秋季東北高校野球 東日大昌平はあす初戦 強豪・一関学院と

来春のセンバツを懸けた、第73回秋季東北地区高校野球大会(東北地区高野連主催)が14日、宮城県の仙台市民球場と石巻市民球場で開幕した。本県第1代表として、6年ぶり4度目の東北舞台に挑む東日大昌平は2回戦から登場。大会2日目の15日、仙台市民球場の第1試合(午前10時開始予定)で岩手県第2代表の一関学院との初戦に挑む。

創部21年目で初めて、秋の県頂点に立った東日大昌平。対する一関学院は今夏の県独自大会を制した強豪。往年の高校野球ファンにとっては旧校名の「一関商工」がなじみ深いはず。春2回、夏6回の甲子園出場を誇り、東日大昌平にとっては大きな山となって立ちはだかる。菅原立稀主将(2年)は「相手がどこだろうと自分たちの野球をするだけ」と初の聖地入りに向け、まずは初戦突破を目指す。

写真は、東北大会に向けて、最終調整する東日大昌平ナイン(クリックで拡大)

■心平記念館 棟方志功との交流描いた企画展開催中 懐かしの緞帳原画も

終生の友として交流した詩人と、世界的版画家の作品などを紹介する企画展「草野心平と棟方志功」が、市立草野心平記念文学館で行われている。会期は12月20日まで。会場には、2人の接点とされる志功の「板画」を使った心平の詩集『亜細亜幻想』はじめ、貴重な作品や、交流の一端がうかがえる書簡が展示されている。

いわき市と心平、志功のかかわりでは、昭和41年4月に落成した旧平市民会館の緞帳(どんちょう)制作の基になった原画4点、同46年9月22〜26日、旧大黒屋デパートで開催されたいわき民報社創刊25周年記念事業「文化勲章受章 棟方志功版画展」の本紙記事、志功と同じ青森市出身の本社創業者・野沢武蔵、志功夫妻、心平といとこの阿部コトさんの4人が写るオープニングの写真などもあり、来館者の目を引いている。

写真は、志功作の旧平市民会館「緞帳」原画に見入る来館者=13日(クリックで拡大)