2020年7月11日(土)

■アクアマリンふくしま20周年連載「震災から未来へ」1.試練乗り越え

ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」が15日、開館から20周年を迎える。メヒカリをはじめとする世界初の展示生物、“生きた化石”シーラカンスの先進的な調査を通し、東北最大級の体験型水族館として長年親しまれてきたが、10周年を迎えた矢先の東日本大震災で、津波で展示していた生きもの約750種20万匹のうち約9割を失うなど甚大な被害に。

いち早く復活し年間来場者数100万人を目標に着実な歩みを進めるも、今度は新型感染症による打撃。度重なる苦難と向き合いつつも、展示を通じて子どもたちに笑顔を届け、海洋環境保全の大切さを伝え続ける同館の歩みや次なる30周年に向けた取り組みについて、全3回にわたって紹介したい。(ホームページは本紙より抜粋)

<震災で迫られた「命の選択」>

平成23年3月11日に発生した大地震。発生前、館内では飼育員による餌やりが行われ、海獣たちも普段通り過ごしていたが、飼育していたセイウチの「ミル」だけが唯一、餌をこぼす不思議な行動をみせていた。海獣類を担当していた同館潮目の海グループふくしまの海チーム副主任の日比野麻衣さん(34)は「地震の発生を予知していたのだと思う」と、当時を振り返った。

生きものたちを逃がさないよう南京錠をかけ、館内の職員は3階、小名浜港の漁港区に設置されていたアクアマリンうおのぞきの職員は三崎公園にあわてて避難。各施設の損傷も大きくライフラインも断絶したことから、魚と動物たちの“命の選択”に迫られた。最終的に魚を救うことは難しく、哺乳動物を優先し他県の水族館に運ぶことを決める。しかし濁る水槽の中で魚は次々と死んでいった。

<被災後わずか約4カ月で再開へ>

アクアマリンでは再開に向けて職員たちがパイプや機械の修理、水槽内の清掃、壁の張り替え作業などに日々汗を流し、全国の水族館からも熱い応援や支援、生きものの提供を受けた。「こんなときこそ水族館が必要だ」と決意を固め、被災からわずか約4カ月後の7月15日に再開することを決めた。

安部義孝館長(79)は再開当時、「復旧復興に頑張る地域の皆さんの期待にこたえる必要がある。地域活性化の起爆剤として立ちあがった11年前を思い出す」としみじみと語っていた。震災の過酷な経験を経て、“安全で安心な水族館”を目指す職員たちの思いはより強固となった。

写真は、震災後に生まれたゴマフアザラシ「きぼう」。その元気な姿は名前通りに市民へ希望を与えた(クリックで拡大)

■冬までにユースサッカー大会検討へ いわきFC支援で

市は今秋から冬にかけて、スポーツを通して、地域活性化を図る2大イベントの開催を検討している。史上初の中止となったインターハイの代替として、高校サッカーの強豪チームを本市に招き、「ユースサッカーフェス」を開催予定。今季からJFL(日本フットボールリーグ)に参戦するいわきFCのホームゲームに合わせ、ホームタウンの本市と双葉郡の9市町村合同による交流イベントを予定している。

両イベントとともに、いわきスポーツクラブの支援を受けて催す考え。感染症拡大防止対策を講じながら、サッカーを通して、スポーツの輪を広げる。「ユースサッカーフェス」は、高校生が主体のいわきFC・U―18がホストチームとなり、全国の強豪8チームが参戦予定。3日間にわたり熱戦を繰り広げる。市によると1100人規模の大会を想定しており、参加チームはいわきFC在籍の選手の出身校などから選出するという。

交流イベントは11月7、8日を予定。いわきFCの試合に合わせて、会場内でスポーツ体験イベントなどを催し、フードコートなどを設ける考えで、7千人規模の集客を見込んでいる。イベントを後押しするため、市は試行事業費を含めた一般会計補正予算案を、16日開会の市議会7月定例会に提出する。

■#おうちでアリオス NUUさん心平作品歌う動画公開

いわき芸術文化交流館「アリオス」は現在、新型コロナウイルスの影響で自宅で過ごす時間の多い人たちのため、同施設と関わりのあるダンスユニット、ミュージシャン、アーティストらのライブ、ワークショップなどを紹介する「#おうちでアリオス」を動画配信している。

このうち、アリオス開館前から市内各地を訪れ、演奏などを届ける「おでかけアリオス」に第1号として出演するなど、本市と縁のあるシンガーソングライターNUU(ぬぅ)さんが詩人草野心平の作品「百姓といふ言葉」を夏秋文彦さん作曲で歌う最新動画を公開している。

NUUさんの歌、良原リエ(アコーディオン)、シーナアキコ(打楽器)さんの演奏が心平の詩を味わい深いものにしている。「#おうちでアリオス」は、同館ホームページで閲覧できる。

写真は、NUUさんが歌う「百姓といふ言葉」の動画より(クリックで拡大)

■いわき市 九州豪雨に向けた募金箱設置

7月の豪雨災害を受けた九州地方の被災地支援のため、市は10日から、市役所本庁舎や市内の公共施設などに募金箱を設置し、市民の浄財を募っている。募金箱は市役所本庁舎、各支所、市民サービスセンター18カ所に設置。このほか、市立美術館、いわき芸術文化交流館「アリオス」、中央、小名浜、植田、常磐、内郷、四倉の6公民館、市総合保健福祉センター、市健康・福祉プラザ「いわきゆったり館」に設置する。

市役所本庁舎は10日〜22日、他の施設は13日から22日まで、募金箱を設置する。寄せられた浄財は義援金として、東日本大震災、東日本台風での被災時に本市を支援してくれた自治体に送金する予定。