2020年5月7日(木)

■市医療センター・新谷院長に聞く 新型コロナ対応に矜持 アビガンやエクモなど準備万端

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、いわき市民が懸念するのは、内郷御廐町の市医療センターに関してだろう。市医療センターは市民の命を守る砦(とりで)であるのと同時に、浜通り唯一の感染症指定医療機関でもある。いわき市の感染経路はほぼ判明している一方、いつ自分や家族が罹(かか)るか分からない。現状について、新谷史明院長がいわき民報社の取材に応じた。

「病院を挙げて、新型コロナウイルス感染症の対応に当たっている」。新谷院長は強調する。感染者の受け入れを行ってきた中で、市民の安全・安心に心を砕いている点は変わらないという。

全国的に院内感染が問題視されているが、新谷院長は「患者さんの中には、外来に来るのが怖いと言う人もいる」と明かす。市医療センターには陰圧室が整備され、感染症用の集中治療室(ICU)もある。導線を別々にするのはもちろんのこと、物理的な仕切りも新たに用意し、そうした不安を払しょくする。

では実際に感染した際は大丈夫か。いまは結核病床も使用し、専用に21床を準備しているが、爆発的な感染拡大に備え、一般病床を使う想定もしている。医師や看護師の動き方もシミュレーション済みだ。また緊急性を要する患者を除き、不要不急の手術や検査は控えている。

呼吸器内科の専門医は、県立医科大(福島市)から週2回の派遣となっている。「この方々に相談しながら、適切に進めている」と新谷院長。常勤医がいないという部分がクローズアップされがちだが、必要な体制は取っていると説明する。

さらに新型コロナウイルスに効果が期待されるアビガンや、症状が進行した際に求められる人工呼吸器に、最近よく聞く体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)はどうなのか――。

こうした疑問に対し、新谷院長は「アビガンは症例に応じ問題なく処方できる上、救急や循環器の分野とも連携し、熟練の技師や看護師もいる。エクモは同時に3台回せる」ときっぱり語る。

県紙では重症患者は3次救急医療機関、つまり県立医科大病院(福島市)と、市医療センターで受け入れ、中等症は2次救急医療機関、軽症・無症状は自宅や宿泊施設とすると伝えられた。宿泊施設としては、県内では福島市のアパホテルが用意されている。

「あの書き方はちょっと違うなと思う」と指摘する。「どの地区の病院であっても、受け入れに当たる。私たちも、いわき市や相双地区での新型コロナウイルスに向き合う」と、地元の感染症指定医療機関としての矜持(きょうじ)を示す。

感染拡大防止に何が求められるかを問うと、「一人ひとりがうつらないための行動をすべき。もう少し我慢してもらえれば、終息に向かうのではないか」と話した。

しんや・ふみあき 北海道三笠市出身。東北大医学部卒。専門は外科。平成6年10月から、旧市立総合磐城共立病院に勤務。21年4月に副院長、26年4月に院長に就いた。現在は市病院事業管理者も兼任する。66歳。

写真は、市医療センターの体制について語る新谷院長(クリックで拡大)

■<新型コロナ>市役所も 大口購入でテイクアウト協力

市は現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、営業時間の短縮などを余儀なくされている市内飲食店に対し、いわき商工会議所の「いわき支えあいキャンペーン」に協力している。

いわき支えあいキャンペーンは、不要不急の外出自粛などによって、テイクアウトやデリバリーの需要が高まる中、大口の購入先を確保することで、厳しい状況にある市内飲食店の経営安定につなげる狙いも持つ。

市内飲食店をはじめとする事業者に向けては、家賃を補助する制度などを始めるが、実際に購入する機会も設けた。なお市では、職員向けに大口のテイクアウト・デリバリー先を募っている。

初回には清水市長のほか、産業振興部、農林水産部、文化・スポーツ室、観光交流室から約110人の職員が、いわき支えあいキャンペーンの趣旨に賛同。平字三町目の「焼肉居酒屋 粋家」から、常陸牛を使った焼き肉、韓国風のり巻きのキンパ、オイキムチを購入した。

清水市長は「大変な中ではあると思うが、市としても応援させてもらいたい」と述べ、市として継続して協力していく姿勢を示した。

いわき支えあいキャンペーンの問い合わせは、いわき商工会議所=電話(25)9151=まで。市に対する大口販売については、市商業労政課=電話(22)7476=へ。

写真は、市内飲食店のテイクアウトに協力する清水市長(右)(クリックで拡大)

■園児のために 教職員が手づくり布マスク作製 小名浜白百合幼稚園

新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として店頭でのマスクの欠品が続く中、本市でも手づくりマスクを製作する動きが広まっている。

小名浜花畑町の小名浜白百合幼稚園(今野トミ園長)では、緊急事態宣言の拡大前、予防のため必須のマスクの購入が難しく登園ができない――などといった保護者たちの悲痛な声を受け、危機感を覚えた教職員総出で手づくりの布マスクを作製。4月8日の始業式、13日の入園式に間に合わせ、園児199人に1枚ずつ手渡した。

同月20日より臨時休園が続き、入園後わずか1週間で自宅待機を余儀なくされた新入園児、そして大好きな先生や友達と会えない日々に悲しむ在園児のため、教職員たちは再度、心を込めた布マスクを渡そうと、製作を再開。

手づくりマスクが広がりをみせ、耳にかける紐(ひも=ゴム)が品薄となる状況の中、代用品としてストッキングを使うなどアイデアを出し合い、園児たちの成長に合わせて大小2種類のマスクをこのほど完成させたという。

1日には、園児たちの担任の先生たちが手づくりマスクと、園で制作途中だったこいのぼりを抱え、教え子の自宅を一件一件訪問。先生との再会を首を長くして待っていた園児たちは大喜びで、保護者と一緒にマスクを受け取り笑顔をみせた。

今野園長も先生たちの報告を受けてにっこり。臨時休園の延長が決まり、さらなる延長も検討される中、同幼稚園では今後も園児たちの安全を最優先に、心に寄り添った取り組みをしていきたい、としている。

写真は、先生からマスクを受け取り喜ぶ小名浜白百合幼稚園の園児(クリックで拡大)

■アクアマリン 31日まで臨時休館延長

ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」は5日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が延長されたことを受け、臨時休館の期間を31日に延長すると発表した。当初は、4月18日より5月6日まで臨時休館とする予定だった。