2020年4月30日(木)

■<新型コロナ>高橋さん(平出身)アビガン秘話 富士フイルムの経営幹部として

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、抗インフルエンザ薬の「アビガン」が治療薬として注目を集めている。特に初期での投与は回復に大きな影響を与えるという。その開発・成果の道のりには、いわき市平字仲間町出身の高橋俊雄さん(77)が大きく関わっている。

高橋さんは富士フイルムホールディングスに勤務している中で、自社がヘルスケア事業をスタートした際、富山化学工業(いまの富士フイルム富山化学の前身)の買収を指揮した。この富山化学工業が研究していた「T―705」こそ、現在のアビガンだ。高橋さんが当時について、いわき民報社の電話取材に語った。

平成18(2006)年から5年間にわたって、富士フイルムホールディングスの代表取締役専務執行役員CFO(最高財務責任者)を務めた高橋さん。「フィルムの売り上げが落ち込む中で、業態転換を迫られた」。

平成12年をピークに、主力のフィルムの売り上げは4年間で4分の3となった。この頃、経営企画のかじ取り役を任された高橋さんは、富士フイルムが持つ技術を生かし、何かできないかを考えた。フィルム生産に使われる酸化防止や化合物の塗布、ゼラチンの加工といったノウハウがあるではないか――。レントゲン写真による診断分野を足がかりに、予防と治療の分野にも乗り出そう。これをきっかけに、富士フイルムは化粧品や薬品事業を手がけるようになった。

ただ薬品分野を、一から始めるのは難儀する。高橋さんは製薬中堅・富山化学工業に目を付けた。研究・開発には定評がある点に注目し、「フィルム技術との相乗効果が期待できる」と、株式公開買い付け(TOB)を通じて傘下に収めた。

<困難乗り越え日本発の特効薬に>

富山化学工業の「T―705」は、新型インフルエンザの薬として開発されていた。後の「アビガン」は、ウイルスがヒトの細胞内に入った際、中で増殖しようとするのを抑える働きを持つ。ライバルは「タミフル」だった。こちらは、ウイルスを細胞外に出ていくのを防ぐ力がある。

ただアビガンには、動物実験で奇形が出るという欠点があった。承認には時間がかかり、高橋さんは富山化学工業の顧問に移った後も、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と、幾度も交渉を続けた。

平成26年にようやく条件付きで認可されたが、当初は日の目は見なかった。風向きが変わったのは、エボラ出血熱に効果があるとされ、政府が備蓄を始めたことにある。巡り巡って、今回の新型コロナウイルスで表舞台に立った。

「新型コロナウイルスの治療薬が無い中で、アビガンが期待されることは非常にうれしい」と高橋さん。何度も研究者と意見を交わし、PMDAを説得した日を思い返しながら、アビガンが世界38カ国に無償供与されることに触れ、「日本発として、少しでも世界のお役に立ってほしい」と話していた。

たかはし・としお 磐城高、東京大工学部卒。昭和40(1965)年、富士写真フイルム(当時)に入社。コンピューター部門や製版用フィルムの営業、英国子会社の社長などを担当した。神奈川県横浜市在住。いわき商工会議所の顧問にも就いており、定期的にいわき市を訪れ、地元企業に対する指導にも当たっている。

写真は、アビガンの開発を下支えした高橋さん(いわき商工会議所提供=クリックで拡大)

■市内公立小・中の休校など 5月10日まで延長

市は30日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、臨時休校している市内の公立小・中について、5月6日までの期間を、同10日まで延長する方針を発表した。公立保育所・幼稚園も同じ措置を取り、私立に関しても要請する。

市内の公立小・中などは18日から、臨時休校・休園となっている。児童・生徒に向けては、市教委からコンテンツを配布し、学習に著しい遅れが生じないようにしている。また預かり先の無い園児や、低学年の児童に対しては、引き続き特例的に対応していく。

なお5月6日までの緊急事態宣言が延長されるなど、状況が変わった場合には、さらに臨時休校・休園が伸びる可能性があるとした。

■オーガニックコットンの好間町・起点 市社協に布マスク70枚贈る

オーガニックコットン製品の企画、製造、販売を行う「起点」(酒井悠太代表取締役)=好間町中好間=は30日、市社会福祉協議会(強口暢子会長)に布マスク70枚を寄贈した。

この寄贈は「起点」の母体となり、綿花栽培からコットン製品の販売を通じ、地域コミュニティーの再生、地方創生を支援する「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」に対する支援の恩返しが目的。同社製造のマスクはS、M、L、キッズの4サイズで、オーガニックコットンが95%、本市で有機栽培された備中茶綿が5%含まれている。

贈呈式は市社会福祉センターで行われ、酒井代表取締役が「マスクが手に入らない人に届く社会にしたい。繰り返し使うことで物を大切にするきっかけになってほしい」と述べ、強口会長にマスクを手渡した。

受け取った強口会長は「安心、安定感あふれる布マスクをいただき、大変ありがたい。皆さんの取り組みが地元に根ざすことをうれしく思います」とお礼を述べた。マスクは市社会福祉協議会が行う子育てフードバンク事業、あんしんサポート事業(在宅)の利用者に配られる。

写真は、強口会長にマスクを手渡す酒井代表取締役=30日(クリックで拡大)

■県中体の夏季競技中止 市中体は開催の道を模索

県中体連は28日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、第63回県中学校体育大会(県中体)の夏季16競技の中止を発表した。市中体連は第68回県中学校体育大会(市中体)の開催を夏以降に延期し、無観客での開催準備を進めている。5月7日の運営専門部会で開催可否を判断。中学生の晴れ舞台の実現に向けて、市、市教委をはじめ、関係機関・団体と協議を進める考え。

県中体の中止発表を受け、市中体連の吉田信治会長は「現在の情勢では仕方がない」と無念さをにじませる一方、第68回市中学校体育大会(市中体)の無観客での開催の道を探る。吉田会長は「やれる方向を探りながら、練習期間も含め、慎重に可能性を見つけたい」と開催の道を模索する。

市中体は当初、6月11〜19日を主会期に開催を予定していた。現在、緊急事態宣言の範囲が全国に広がったことに伴い、市内の中学校は休校を余儀なくされており、予定通りの開催は困難と判断。5月7日の運営専門部会で開催を夏以降に延期し、無観客での開催を提案する考えだ。

県中体、東北中体、全中と中止が決定。宣言解除も不透明な中、吉田会長は目標を失った生徒たちに「思い出の場をつくってあげたい」と話す。市中体連単独では開催実現に限界がある。市、市教委をはじめ、関係機関・団体と慎重に協議を重ね、生徒たちがけがもなく、競技に臨める環境づくりを図るつもりだ。

柔道や剣道、バスケットボールなど選手同士の接触が懸念される競技については、各専門部と話し合い、競技内容を変更するなど対応し、安全・安心に大会運営を進める考え。加えて、中学生最後の大会となる3年生へ配慮し、全員が試合に出場できる機会を提案する。