2020年4月14日(火)

■いわき市で新型コロナ3例目 60歳代の会社員男性 市中感染か

市は14日夕方、いわき市の60歳代会社員男性が、市内3例目の新型コロナウイルス感染者と確認されたと明らかにした。清水市長が14日午後6時から、平字梅本の市役所で臨時記者会見を実施し、詳細について公表した。男性は軽症で、14日に県内の感染症指定医療機関に入院した。感染経路は分かっておらず、市内2例目と同じく市中感染とみられる。市は男性の居住する地区(支所単位)は明かしていない。

市によると、男性は6日夕方に37・1度の発熱、だるさがあり、7日に市内の医療機関を受診。10日に発熱、めまい、全身倦怠(けんたい)感を覚え、同じ医療機関を訪れている。いずれも風邪の症状と判断されていたという。13日には38度台の発熱、めまい、倦怠感があり、医師の判断で帰国者・接触者外来に行き、14日にPCR検査の結果、新型コロナウイルスの陽性と判明した。

現時点で他の感染者との接触は確認されていない。また男性は妻、成人の子ども2人との4人家族で、濃厚接触者と考えられる。発症は6日の退勤後とされているが、このほかの濃厚接触者や、これまでの行動歴なども調べている。7日以降は出社しておらず、受診以外の外出もしていない。医療機関には家族の運転で向かった。

記者会見に当たって、清水市長は市民に対し、不要不急の外出を控えることや、3つの密(密閉・密集・密接)を避けるよう呼びかけるとともに、公式発表以外の情報に惑わされないよう注意を求めた。なお市内公立小・中の休校などに関しては、常に検討しているとしながらも、いわき市は現時点で新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)には至っていないと否定した。

写真は、市内3例目の感染者について会見する清水市長=14日午後6時2分(クリックで拡大)

■<新型コロナ>映画の灯守る ポレポレ名作などで対抗

新型コロナウイルスの感染拡大によって、全国的に映画館は窮地に立っており、緊急事態宣言が出された7都府県では、ほぼすべてで休業を余儀なくされている。3つの密(密閉・密集・密接)を避けるよう求められる中、いわき市でポレポレシネマズいわき小名浜(小名浜字辰巳町)、まちポレいわき(平字白銀町)を運営する「名画座」も苦しい。未曽有の事態を前に、映画の灯を消さないよう努力する姿を取材した。

「4月は前年対比9割減だよ」。名画座の代表・鈴木修典さん(59)はそう現状を明かす。3月は東電福島第一原発事故を扱った「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」がヒットしたため、売り上げは確保できたが、新型コロナウイルスの感染広がりに太刀打ちはできない。

ドラえもん、名探偵コナン、クレヨンしんちゃん――。子どもから大人まで楽しめる国民的アニメは次々と延期が決まった。ハリウッドの大作も同じくだ。鈴木さんは「シネコン(シネマコンプレックス=複合映画館)にとっては大打撃だが、配給会社としては、良い時期に映画を出したいと思うのは当然」と述べる。

ならばと上映する映画が無いのを逆手に取り、ポレポレシネマズいわき小名浜で17日から、ゴッドファーザーやジョーズ、愛と青春の旅だちといった名作をかける。5月からも多彩な近作を並べる計画を持つ。だが先行きは不透明という。現場を統括するゼネラルマネージャーの横山浩美さん(57)は、「いつになったら、お客さんが戻るか分からない」と指摘する。

横山さんは全国の映画館で責任者を務めた経験を持ち、東日本大震災の際には、茨城県水戸市の映画館・TOHOシネマズ水戸内原で支配人に就いていた。「あの時は1カ月後に映画館が再開したが、瞬く間に混雑した」と振り返る。スクリーンを守ってきた一人として、横山さんは「外出する難しさもあると思うが、新型コロナウイルスによって不安になっている心を、少しでも映画で癒やしてほしい」と呼びかける。

<逆風に立ち向かう矜持見せる>

今後も映画館を続ける以上、鈴木さんは誰が悪い訳ではないと前置きした上で、「人混みへの不要不急の外出の自粛などを要請するならば、粗利や人件費の補償は不可欠と考える」と話す。「低金利とはいえ、むやみに借金をするのもどうか」。新型コロナウイルス終息のめどが立たない中で、事業継続に対する融資のあり方も問われると重ねる。

もちろん新たな構想も抱く。動画配信サービスと連携し、インターネットでしか見られないオリジナル作品を、映画館の大きなスクリーンで鑑賞する試みもその一つ。鈴木さんは「この逆風にどう立ち向かうか。多くの知恵が必要となる」と、館主としての矜持(きょうじ)を強調する。

長年にわたって、古里のまちづくりに尽力してきた鈴木さん。シネマコンプレックスを展開しながらも、平の街からも映画館を無くさなかった。「まあ頑張るしかない」。苦境に陥りながらも、前を向くことを笑顔で誓った。

写真は、新型コロナウイルスの影響を受けている「ポレポレシネマズいわき小名浜」=14日(クリックで拡大)

■市を挙げた感染抑止を コロナ対策のチーム発足

市は13日、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、対策組織「新型コロナに負けないプロジェクトチーム」を発足させた。発足式が13日午後、市役所第8会議室で開かれた。チームは保健医療対策強化、不活発化防止対策の2班で構成され、市を挙げて感染抑止に努めていく。

保健医療対策強化班は10人体制。帰国者・接触者外来や入院病床の拡充、軽症者の宿泊療養の実施体制整備、不足している医療用資機材や医療品等の調達を進める。

不活発化防止対策班は12人体制。外出自粛の状況から、全世代が体を動かす機会が減っているとし、心身の健康悪化が懸念されるため、4月中をめどに、感染リスクの低い「不活発化防止策」の策定検討に当たる。

■原発処理水 低調な意見聴取会 清水市長「風評招かぬ心構えを」

政府は13日、東電福島第一原発の放射性物質・トリチウムを含む処理水について、県内の自治体や商業・農業関係者らを対象に、福島市のザ・セレクトン福島、富岡町のホテル蓬人館で、6日に続いて2回目となる意見聴取会を行った。

福島第一原発で生じた汚染水を浄化した後の処理水に関して、政府の小委員会は2月、海洋放出か大気放出が現実的とする提言をまとめており、動向が注目されている。意見聴取会は午後から福島市、夕方から富岡町で実施。出席者からは初回と同じく、風評被害を懸念する声が相次いだ。

また進行は、経済産業省の松本洋平副大臣が務め、東京側に意見を聴く場面があったが、前回と変わらず活発な議論は起こらず、低調な様子を印象付けた。新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、東京と福島をテレビ会議でつなぐやり方に、不具合が生じる場面もあった。

いわき市からは清水市長が出席し、「トリチウム水の科学的性質、国内外での排出実績を正しく情報発信すべき」と指摘。賠償を前提とするのではなく、風評被害を発生させないとする心構えが必要と説いた。さらに「新たな基金の創設など、財源的な裏付けがなければ、関係者の理解は得られない」とも語った。

直接的な賛否は明らかとしなかったが、県民の多くが海洋放出に反対していると述べ、「いま拙速に結論を出すのではなく、あらゆる可能性を検討するように」と注文を付けた清水市長。国・東電・地元住民の信頼関係が不可欠とし、信頼を裏切ることなく真摯(しんし)に丁寧に対応するよう求めた。

その他の出席者は次の通り。▽轡田倉治(県商工会連合会長)▽真船幸夫(ヨークベニマル代表取締役社長)▽菅野孝志(県農業協同組合中央会長)▽伊沢史朗(双葉町長)▽宮本皓一(富岡町長)▽遠藤智(広野町長)▽篠木弘(葛尾村長)▽松本幸英(楢葉町長)▽遠藤雄幸(川内村長)▽吉田淳(大熊町長)▽吉田数博(浪江町長)

写真は、意見を述べる清水市長=13日夕方(代表撮影=クリックで拡大)