2020年4月11日(土)

■「東日本台風」あす上陸から半年 夏井川・好間川の本格復旧始まる

いわき市に甚大な被害をもたらし、死者13人(直接死8人・ヘリから落下1人・災害関連死4人)を出した東日本台風(令和元年台風19号)は、12日で上陸から半年を迎える。県いわき建設事務所は10日、夏井川・好間川の堤防決壊箇所について、応急復旧に続いて、3月末から本格的な工事に着手したと明らかにした。決壊箇所以外でも復旧工事を早急に進めていく方針。

東日本台風では、夏井川は小川町高萩字東、小川町三島字緑、小川町関場字川原、平中平窪字戸川原、平下平窪中島町、平下平窪字大念仏、平下平窪字四左エ門内、平鯨岡字表門の8カ所、好間川は好間町今新田字正当で決壊が生じた。

県いわき建設事務所によると、本格工事は平中平窪字戸川原を除いて開始しており、ここも始める予定となっている。本格工事に当たっては、工事箇所ごとにA3判のチラシを作製し、該当地区に配布する。また、地元住民に対する説明会を実施する計画だが、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、開催時期は判断していく。

総事業費は約305億円。県は被害を基に、国に対し、災害復旧と合わせて河川改良を行う「災害復旧助成事業」の申請を協議し、3月23日に採択された。

対象となるのは、夏井川は新川合流点―小川町・両郡橋の間(14・9キロ)、好間川は夏井川合流点―好間町・新町田橋の間(6・6キロ)。本年度は用地買収と並行し、河道掘削などに入り、来年度には護岸工事も進行させ、令和5年度の完了を目指す。

4月の工事としては、樹木の伐採や堤防を築く作業を展開している。復旧工事に際しては、土砂等を運搬する大型車の通行が多くなるため、県いわき建設事務所は理解・協力を求めている。決壊した箇所の近くに住む住民からは、早期の対策を求める声が寄せられていた。

写真は、決壊箇所の一つ・平下平窪字四左エ門内=11日(クリックで拡大)

■危険業務従事者たたえ いわき市では8人が栄誉

政府は11日付で、第34回危険業務従事者叙勲の受章者を発表した。警察や消防、自衛隊、矯正施設など著しく危険性の高い職場で、業務に精励した元公務員が対象となり、毎年春・秋に贈られている。受章者は全国3639人、県内70人で、市内からは瑞宝双光章の元いわき市消防監の箱崎幸善さん(65)ら8人が栄誉を受けた。発令は29日付。

【箱崎幸善さん=元いわき市消防監】

平出身。平商業高卒。昭和48年、消防士拝命。市民の生命・財産を守ることに努め、平消防署主幹兼副署長、勿来消防署長などを経て、平成27年3月に平消防署長で定年退職した。退職後は勿来勤労青少年ホーム(現・金山公民館)館長、小名浜共同防災協議会専従員に就き、変わらず地域を見守ってきた。

記憶に残っているのは平成23年3月11日、小名浜消防署主幹兼副署長の時に起きた東日本大震災。尋常ではない揺れとともに、庁舎前の地面がめくれ上がり、津波が来ると直感し、住民の避難誘導を行った。間もなく近くを流れる藤原川には、真っ黒な濁流が勢いよくさかのぼってきた。

消防士を志したのは、高校時代に見た火の見やぐらに立つ消防士の姿。箱崎さんは「通学の度に見かけて、かっこいいなと思った」と笑う。「先輩や家族など、多くの方の支えがあって受章できた。本当にありがたい」と感慨深い様子だった。

【村上佳代子さん=元1等陸佐】

錦町出身。磐城女子(現・磐城桜が丘)高を卒業後、昭和52年に自衛隊中央病院高等看護学院に入った。看護師の立場から自衛官を務め、在職中に青山学院大を卒業。東京・市ケ谷の陸上幕僚監部や、全国の自衛隊病院で勤務経験を持つ。

自衛隊看護師の育成に努めたほか、国際貢献のはしりとして、平成15年に始まったイラク派遣にも国内で携わった。平成26年7月、自衛隊中央病院看護部長で定年退官。27年2月から、鹿島町のかしま病院に勤務している。現在は理事兼副院長兼顧問の立場で、看護の現場に立ち続けている。

村上さんは「後輩を育てながら、国民の安全に貢献してきた」と語る。自衛官として、使命感を持って看護ができる喜びを強く感じたと振り返り、「受章は大変ありがたい。自分の仕事を評価していただけたことは、非常にうれしい」と喜びの声を上げる。職場は変わったが、最良の看護を届ける思いはこれからも変わらない。

<このほかの受章者>

▽小松光夫さん=元福島県警部▽吉田充さん=元海上保安官▽菅野昇さん=元福島県警視▽白鳥康平さん=元いわき市消防司令長▽長谷川一三さん=元福島県警部▽藁谷一夫=福島県警部補

写真は、叙勲を受けた箱崎さん(左)と村上さん(クリックで拡大)

■フランスの至宝 いわきに きょうから「トラスブール美術館展」

市立美術館など主催「ストラスブール美術館展 印象派からモダンアートへの眺望」が11日から、平字堂根町の同館で始まった。会期は5月24日まで。同展では、フランス・ストラスブール美術館に所蔵されている油彩、水彩、リトグラフなどの風景、人物、抽象画など91点を展示する。

会場では「印象派とポスト印象派」「近代絵画におけるモデルのかかわり」「アヴァン=ギャルド」のテーマごとに、近代美術の流れを紹介している。時間は午前9時半から午後5時(入場は同4時半)まで。月曜休館(5月4日は開館、同7日は休館)。問い合わせは、市立美術館=電話(25)1111=へ。

写真は、きょうから始まったストラスブール美術館展=11日(クリックで拡大)

■市県民税56人の特別徴収に誤り データ作成の際に不備

市は10日夕方、公的年金からの市県民税の特別徴収事務について、市外に転出した56人分に誤りがあったことを明らかにした。賦課期日(1月1日)に、いわき市に住民票がないにもかかわらず、15日に支給される公的年金から、合わせて47万100円が徴収されてしまう。

市によると、2月に行った特別徴収の停止データ作成の際、データ入力に誤りがあった上、確認が十分でなかったことが原因とされ、2日に届いた徴収結果から判明した。

誤徴収の対応は対象者におわびの文書を送り、5月中旬に返金するほか、電話でも説明を行う。再発防止策としては、担当者を1人から2人とし、事務処理工程表、処理チェックリストを活用していくという。