2020年4月1日(水)

■東北初「燃料電池バス」運行開始 いわき駅―小名浜間 水素の利活用推進を

新常磐交通(本社・明治団地)は1日、いわき駅―小名浜間の路線バスとして、燃料電池バス「SORA(ソラ)」の運行を開始した。燃料電池バスの路線バスは東北地方初となる。燃料電池バスは水素が燃料のため、大気汚染の原因となる二酸化炭素や窒素化合物を一切排出せず、環境に配慮した公共交通システムとして、全国的に注目されている。いわき市は東電福島第一原発事故を踏まえ、水素エネルギーの利活用を進めており、SORAの導入を通じ、民間の立場から取り組みを盛り上げていく。

SORAはトヨタ自動車製で、乗車定員は78人(座席22・立席55・乗務員1)。水素と酸素の化学反応によって、生み出された電気エネルギーでモーターが駆動する。走行音が非常に静かな点も特徴だ。

第1便の出発式が1日朝、JRいわき駅前のバスターミナルで行われ、新常磐交通の門馬誠取締役が「地域の皆さまと手に手を携えながら、安全で安心なバスづくりを実現していきたい」と抱負を述べた。

燃料電池バスは1日2往復半(月曜日は原則として除く)、いわき駅と小名浜車庫の間で運行され、鹿島ショッピングセンター「エブリア」や船戸団地、イオンモールいわき小名浜を経由する。

通常の運賃で利用可能だが、年末年始、点検・整備などの場合は一般車両に変更される。主な停留所の時刻は、チラシ<こちら>を参照すればよい。

<官民一体となった盛り上がり>

水素エネルギーの利活用推進に当たって、市内では官民一体となって、積極的な動きが図られている。昨年3月には鹿島町に、県内初となる商用定置式水素ステーション「いわき鹿島水素ステーション」がオープン。いわき商工会議所が旗振り役となり、会員企業の関係者がトヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を続々と購入している。

市も昨年8月、公用車にMIRAI台を採用したほか、市民向けに燃料電池車・バスに対する補助金を創設している。

今年3月には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心に、双葉郡浪江町に水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」が開所したが、世界最大級の生産能力を有しており、いわき市は水素の消費地となることを目指している。

写真は、きょうから運行が始まった燃料電池バス。車体には水素を意味する「H2」の文字も=1日(クリックで拡大)

■きょう 市内各地で入庁・入社式開かれる

新年度最初の日となった1日、いわき市の官公庁や企業では入庁式・入社式が開かれた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、規模縮小や中止の事例もあったが、市内各地で緊張した面持ちを浮かべつつ、真新しいスーツに身を包み、社会人としての一歩を踏み出す若者の姿が目立った。

<市長部局 全体の奉仕者として貢献を>

市でも1日、新規採用職員に対する辞令交付式が行われた。本年度の採用者は147人で、うち市長部局74人に向けては、本庁舎第8会議室で実施されたが、新型コロナウイルスの感染防止を踏まえ、入り口でマスクを配布する措置を講じた。

辞令交付式では、新規採用職員の名前が一人ひとり読み上げられ、渡辺智明さん(27)=政策企画課=が辞令を受け取った後、松井裕希さん(22)=情報政策課=が服務の宣誓に臨み、全体の奉仕者として貢献していくと述べた。

清水市長があいさつに立ち、いわき市が取り組む課題を紹介するとともに、「使命感を持って市職員となった皆さんには、先輩の教えを受けながら、常に『親切第一』を心がけ、高い倫理観で市民のため、いわき市のさらなる発展のため精励してほしい。皆さん、共に頑張っていきましょう」と新規採用職員を激励した。

写真は、清水市長から辞令を受け取る渡辺さん=1日(クリックで拡大)

<マルトグループHD 信頼される社員に>

スーパーマーケット、ドラッグストア、総合衣料店などを展開するマルトグループホールディングス(本社・勿来町窪田十条、安島浩代表取締役社長)の入社式が1日、勿来町窪田の本部で開かれ、新入社員28人(男11人、女17人)が会社の発展と地域社会の幸せの創造に向けて尽力していくことを誓った。

本年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて出席者数を制限し、座席の間隔をあける、飛沫(ひまつ)防止のために社歌の合唱を取りやめるなど式を簡素化し、感染予防に配慮した。

まず安島社長が経営理念や「お客さまをお迎えし、最高の商品を最高の接客で販売する」という同HDの行動指針に触れながら、「自分が幸せになるためにどうすべきか、ともに考えて行動し、この地域を幸せにしよう」と呼び掛け、くすりのマルトの安島力代表取締役社長、総合衣料ファミリーの安島ゆみ子代表取締役社長、同HD管理本部の石山伯夫取締役本部長がエールを送った。

このあと新入社員を代表し、熊谷沙久耶さん(22)が感謝の気持ちと向上心を胸に「生涯教育の精神で常に高い目標を持ち、信頼される社員を目指したい」と力強く宣誓。新入社員たちはメモを取りながら役員のアドバイスに耳を傾け、自己啓発に励み、活躍することを誓っていた。新入社員たちは今後部門ごとに研修を行い、6月1日に新部署に配属されるという。

写真は、新入社員を代表し、宣誓する熊谷さん=1日(クリックで拡大)

■いわき市の景気は「下降」 新型コロナで今後相当の減退も

市は1日までに、経済・景気動向調査報告「TRAIL(トレイル)」を公表し、令和元年第4四半期(10〜12月)の状況について、いわき市は消費税引き上げに加え、東日本台風(台風19号)の影響もあって、ほとんどの分野で減少しており、「後退局面」から「下降」に転じつつあると明らかにした。

また小売店従業員やタクシー運転手など、現場で働く人に聞く「景気ウォッチャー調査」に関しても、2月は現状・先行きともに、前回(昨年11月)と比較し、指数は6〜7ポイント程度下がっている。

全国的な動向として、新型コロナウイルスの感染拡大が、大きな影響を及ぼすと予想され、令和2年第1四半期(1〜3月)以降は、相当の景気減退の可能性があるとしている。

経済・景気調査のうち、いわき市の需要動向は、消費税引き上げ前の駆け込みとして、自動車新規登録台数(前年四半期比11・2%増)を除き、大型小売店等販売額(同2・1%減)、建築確認申請受付件数(同25・9%減)、観光施設利用者(同13・5%減)など軒並み減少している。市産業創出課は「良い分野は見当たらない」と酷評する。

企業動向では、中央卸売市場取扱高(同8・1%減)、小名浜港輸入通関実績(同11・6%減)がマイナス傾向。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)も、総合は昨年12月時点でマイナス15・9と不振が続く。

雇用動向については、新規求人倍率は約2倍、有効求人倍率は約1・5倍程度で維持してきたが、マイナスが並び始めている。トレイルは、市ホームページ内<こちら> で閲覧可。