2020年3月31日(火)

■田人町の国道289号 きょうから一般車両通行可に 東日本台風で土砂崩れ

昨年10月の東日本台風の影響で大規模な土砂崩れが発生し、一部通行止めとなっていた田人町地内の国道289号の仮設道路が完成し、31日午前10時より一般車両の通行も可能となった。同区間では道路の片側を仮設復旧し昨年末より緊急車両や通勤通学を目的とした近隣住民に開放してきたが、沿線に立ち並ぶ宿泊施設や飲食、雑貨店などに少なからず影響を与えてきた。地元からは利用促進への期待が高まる一方、今度は新型コロナウイルス感染症の影響を心配する声も。手放しで喜べない状況となっている。

開通したのは、国道沿いを流れる入旅人川の対岸に整備した全長約500メートル、幅員約7メートルの仮設道路。施工した国交省磐城国道事務所によると、通行止めとなっている約800メートル区間については今後、崩壊した複数箇所の山側に擁壁と、山から流れる沢水を同河川に流すために道路下に排水設備を設ける予定だ。

路の復旧工事は来年1月末までを見込んでいるが、同事務所と県によると、崩壊した山体は上部は国有林、中腹から下部は民有林となり、国有林は林野庁、民有林は県がそれぞれのり面の保護、土砂などの流出を防ぐダムの設置工事を今後実施し、山側の復旧工事を終えた後に本線を通すスケジュールのため、完全復旧は数年程度はかかる見込みという。

県内外の湯治客などに人気の高い「田人おふくろの宿」は災害発生後、最も影響のあった沿線の施設で、一般は市田人支所より5キロほどの山道を超える迂(う)回路を利用しなければならず、一時は利用者が激減。レストランを休止するなどして対応したが、送迎バスを出すなど自助努力により年末年始は平年並みに客足が戻ってきたという。

しかし2月に入り、今度は新型コロナウイルスの感染拡大により首都圏の団体宿泊を中心に再び利用客が激減。踏んだり蹴ったりの状況で、同施設を運営するおふくろの宿企業組合の小沢重好理事長(72)は「ようやく仮設道路が開通したかと思ったら、今度はコロナ。毎日キャンセルの電話ばかりで、昨年と比べると利用者は半分に。何ともやりきれない思いだ」とうなだれていた。

沿線に店を構え、土日に営業を行う農産物直売所「旅人やさい館289」の緑川純一代表(72)は「少しずつ客が戻ってきていたが、例年ほどではなかった。仮設道路が完成して本当に良かった」と喜ぶ一方、同施設の苦境を間近にし「うちはコロナの影響はあまりないが、今後が心配だ」と手放しで喜べない状況に不安げな声を上げている。

一般車両の通行が可能となった田人町・国道289号の仮設道路=31日(クリックで拡大)

■新型コロナ志村けんさん死去 旅番組でいわきにも

新型コロナウイルスによる肺炎で、29日夜に亡くなったコメディアンの志村けん(本名・志村康徳)さん(70)。30日午前に訃報の一報が伝わると、市民からも驚きの声が聞かれた。所属事務所によると、志村さんは17日から倦怠(けんたい)感を訴え、19日に発熱・呼吸困難の症状が表れた。自宅で静養していたが、20日に医師の判断で入院。重症の肺炎と診断され、23日には新型コロナウイルスの陽性と判定された。

東日本大震災前の平成20年には旅番組で、いわき市など浜通りを訪れた志村さん。番組は小名浜・三崎公園の潮見台から始まり、小浜漁港近くの食堂や、小名浜の直売所などに足を運んだ。平薄磯の「山六観光」では、いわき市の郷土料理・ウニの貝焼きづくりにも挑んだ。

震災後に建て替えをしたため、写真などは残念ながら残っていないが、社長の鈴木一好さん(69)は「撮影中は冗談を交えたりもするが、至ってまじめで、テレビから感じる印象とは違った」と、当時の様子をはっきりと覚えている。ホッキ貝にウニの身を詰める作業を体験した際には、志村さんは鈴木さんから指導を受けた。また蒸したての貝焼きに舌鼓を打ったという。

<名ギャグは福島ことばから生まれた>

志村さんは東京都東村山市生まれ。ザ・ドリフターズのメンバーとして活躍し、バラエティー番組「8時だョ!全員集合」で人気を博したほか、現在も「志村けんのバカ殿様」や、「天才!志村どうぶつ園」など多くの冠番組を持っていた。

福島市出身の作曲家・古関裕而をモデルに、30日から始まったNHKの連続テレビ小説「エール」の出演や、12月公開予定の映画「キネマの神様」の主演も決まっていたが、いずれも新型コロナウイルスの感染で辞退していた。なお「エール」に関しては、撮影済みの分は放送される予定となっている。

ギャグの一つ「だいじょうぶだぁ」は、福島ことばからつくられた。喜多方市に志村さんの親族が住んでいた縁で、その話す様子を誇張して生まれたとされる。また志村さんが郡山市にロケで訪問した際、茶屋で応対したおばあさんがお代を受け取らず、「だいじょうぶだぁ」と告げたエピソードから誕生した説もあり、いずれの地でも志村さんが語り継がれている。

写真は、亡くなった志村けんさん(平成30年2月=読売・佐々木紀明撮影、クリックで拡大)

■燃料電池バス 「SORA」あすから運行 いわき駅前―小名浜車庫間

新常磐交通が東北初導入した燃料電池バス「SORA」が、4月1日から運行する。SORAは、トヨタ自動車が開発した量産型燃料電池バス。水素と酸素の化学反応で発電した電気がモーターを回し駆動させ、その過程で二酸化炭素および窒素化合物が発生しないことから地球温暖化対策などにも適している。

水素タンク10本を備え、乗車定員は78人(座席22、立席55、乗務員1)。通常運賃で利用できる。なお年末年始、点検・整備などの場合、一般車両で運行する。問い合わせは、常磐交通乗合部=電話(46)1646=まで。

ダイヤなどは、下のチラシ(クリックで拡大)を参照すれば良い。

■湯本高卒の紺野さん 東京芸大に現役合格果たす

湯本高を今春卒業した紺野駿人さん(18)=いわき市平成=が、東京芸術大音楽学部器楽科テナー・トロンボーン専攻に現役合格した。湯本高吹奏楽部では、音楽面で部員をまとめる「学生指揮者」を務めながら、日ごろの練習を重ねた成果が結実した。

平三小でトロンボーンに出会い、音楽の道を志した紺野さん。同市植田町出身で、NHK交響楽団のバストロンボーン奏者・黒金寛行さん(34)らに指導を仰ぎ、難関突破にこぎ着けた。

ただ本番は順風満帆とはいかなかった。テナー・トロンボーン専攻は3回の試験(本年度は新型コロナウイルスによって、2回で打ち切りに)があるが、1次試験で課せられた最初の音階でミスをしてしまった。

「いつもできることができなかった。悔しかった」と紺野さん。緊張もあったのだろう。だがそこで崩れず、挽回しようと気持ちを入れ替えたことが功を奏し、受験生12人の中から、2次試験に進む2人に入った。

「一気にモチベーションが上がった」と紺野さん。2次試験ではピアノ伴奏を相手に、10分弱の協奏曲を吹き切った。「思うようにできた」と当時を笑顔で振り返る。紺野さんを含む2人とも合格を果たした。

将来の夢を問うと、紺野さんは「演奏活動はもちろん、地元の子どもたちにも教えたい」と話す。いわき市は吹奏楽が盛んとはいえ、専門的に音楽教育を受ける環境は、どうしても都会と比較して劣る。

紺野さんは自らの経験も踏まえ、「身近に指導する存在になりたい」と夢を膨らませる。演奏家・指導者として、二足の草鞋(わらじ)を履く紺野さんの活躍がいまから楽しみだ。