2020年3月15日(日)=休刊日

新型コロナウイルス感染拡大を受け、東京五輪の開催や延期に関する発言が相次ぎ、波紋が広がっている。

「予定通りで変更はないと確認した」。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は14日、ギリシャでの聖火リレーが中止になったことを受け、国内の聖火リレーは予定通りと強調した。ギリシャから帰国し、羽田空港で取材に応じ「(国際オリンピック委員会=IOC=の)バッハ会長と関係者が意見交換し、ギリシャ五輪委員会の会長が判断した」と説明。またバッハ会長が海外メディアに「世界保健機関(WHO)の助言に従う」と述べた発言については「専門家の意見を聞くという当然のことを言ったまでだ」との見解を示した。

五輪の開催可否については、IOCが大会を中止する権利があると、IOCと東京都などが結んだ開催都市契約に明記されている。延期についても同様とみられる。IOC側は一貫して通常開催を強調してきたが、12日のトランプ米大統領の「無観客で実施するよりも1年延期する方が良い選択肢だ」との発言を受け、可否判断の時期が関心の的となっている。

4月19日から国際スポーツ関連団体の国際会議がスイス・ローザンヌで予定され、IOC側との協議も注目だったが、会議は中止となった。一部のIOC委員からは「5月下旬が期限」などの発言もあり、この辺りが判断時期の一つの目安となりそうだ。

ただ、中止は現実的に難しいとの見方がある。IOCの収入の柱は五輪の放送権料で、米NBCは2011年、2014〜2020年の夏季・冬季計4大会の米国向け放送権を43億8000万ドル(約4750億円)で獲得している。中止の場合の損失は計り知れない。

延期の場合もハードルが高い。開幕を1年遅らせると、一部の競技会場ではすでに使用予約が入っているといい、大会関係者は「会場を借りられないケースが出てくる」と話す。

また、来年は主要競技の水泳や陸上の世界選手権が予定されており、難しい調整を迫られる。2年後の2022年には北京冬季五輪やサッカー・ワールドカップ(W杯)と世界的スポーツイベントが目白押し。選手村は大会後に分譲マンションとして販売されるため、延期は購入者の入居時期の遅れにつながる可能性もあり、補償問題も浮上する。

大会組織委が通常の準備を進めている背景には、IOCの開催に向けた強い意欲がある。ただこの現状で開催すれば、日本が感染者の多い国からの選手団の入国を拒んだり、選手が出場を見合わせたりする事態も想定され、大会の機運低下も懸念される。(読売新聞社配信)

図は、東京五輪までの主な予定(クリックで拡大)