2020年3月13日(金)

■塩屋埼灯台 120年の歴史で初のレンズ回転変更 水銀抜き取る

平薄磯の塩屋埼灯台では現在、改修工事が行われており、灯台レンズの回転方式が従来の水銀に浮かせる仕組みから、車輪機構に変更する作業が進められている。福島海上保安部によると、明治32(1899)年の点灯開始以来、120年にわたって水銀が用いられていたが、世界的に水銀の使用制限を強化する動きに合わせ、塩屋埼灯台にも全国7例目となる車輪機構の採用を決めた。福島海保は13日、改修工事を報道陣に公開し、長年使ってきた水銀を抜き取った。

塩屋埼灯台のレンズ等は約3トンの重さがあり、電気モーターの小さな力でも動かせるよう、比重が大きい水銀が入った容器に入れ、浮かせながら回転させている。

ただ灯台の上部空間は狭いため、作業する際には、水銀から揮発するガスの影響を考慮し、防毒マスクやゴーグルの着用が必要となる。なお一般の見学に当たっては問題はないが、参観を開始する前に換気をしている。

こうした点に加え、平成29年8月に「水銀に関する水俣条約」が発効し、水銀にまつわる規制が国際条約で定められたことから、全国の灯台で順次、車輪機構に改められている。東北地方では、尻屋埼灯台(青森県・東通村)に次いでの実施。

容器に入った水銀は劣化しない限り、何十年にもわたって使われ続けるため、抜き取られるのは大変珍しいという。福島海保の担当者も初めて携わったと語る。抜き取りは13日の間に終わり、約10リットルの水銀が小分けにされていった。

回転方式を変更するのに合わせ、11日夜から塩屋埼灯台の光は、仮設のLED灯器で代替されている。実効光度は100分の1以下、光達距離は22海里(約40キロ)から12海里(約22キロ)となるほか、光が届く角度も狭くなるが、船舶に事前に伝達しており問題はない。仮設の期間は3月末までの見込み。

塩屋埼灯台は、明治32年12月15日に初点灯した。2度の大きな地震と太平洋戦争の災禍を乗り越え、「豊間の灯台」として、長年にわたって市民に親しまれながら、船舶の安全を見守っている。昨年は120周年に合わせ、官民一体で記念事業が展開された。

写真は、水銀の抜き取りを行う作業員=13日(クリックで拡大)

■あす常磐線全線復旧 9年ぶり 仙台までの鉄路再び

東日本大震災・東電福島第一原発事故に伴い、不通となっているJR常磐線富岡(富岡町)―浪江(浪江町)駅間の20・8キロが14日、ダイヤ改正に合わせ、およそ9年ぶりに運転を再開し、常磐線は全線復旧を果たす。

いわき―仙台間の鉄路が再びつながるに当たって、品川駅・上野駅―仙台駅間で特急「ひたち」を3往復、富岡駅―浪江駅間で普通列車を11往復運転し、利便性向上を図っていく。浜通りのさらなる活性化が期待される。

常磐線の富岡―浪江駅間には、原発事故による帰還困難区域も含まれていたが、双葉駅(双葉町)周辺は4日、大野駅(大熊町)周辺は5日、夜ノ森駅(富岡町)周辺は10日をもって、避難指示が解除された。駅舎の改修も行われ、双葉駅は新たに橋上駅化されたほか、大野駅や夜ノ森駅も生まれ変わった。

常磐線の全線開通に合わせ、いわき―仙台駅間の特急「ひたち」も、着席サービスが適用され、全車指定席となる。車内で特急券を購入した場合、事前購入と比較して割高となる。

14日からは、JR東日本の交通系ICカード「SUICA(スイカ)」のエリアも拡大する。いわき―浪江駅間が首都圏エリア、小高駅(南相馬市)以北が仙台エリアとなり、これをまたいでは利用できない。また、Jヴィレッジ駅(楢葉町)が常設駅となる。

写真は、JRいわき駅の運転再開や着席サービスを伝える掲示=13日(クリックで拡大)

■いわき避難者訴訟 仙台高裁 ふるさと喪失認め増額

東電福島第一原発事故に伴い、双葉郡からいわき市などに避難する住民ら216人が、ふるさと喪失の慰謝料など計18億8070万260円の損害賠償を求め、東京電力を訴えた訴訟(いわき避難者訴訟)の控訴審は12日午後、仙台高裁(小林久起裁判長)で判決が言い渡され、東電に対し、1審・福島地裁いわき支部判決から賠償額を計約1億5000万円増やし、計約7億3000万円支払うよう命じた。

全国30あまりの原発集団訴訟で、高裁の判断が出されるのは初めて。小林裁判長は住民が原発事故によって、住み慣れた街を奪われた「ふるさと喪失」を認定するとともに、東電の津波予見性も認め、具体的な対策工事の計画を先送りしたとして、慰謝料を増額するべき事情になると指摘した。

慰謝料に関しては居住制限、避難指示解除準備、緊急時避難準備の3区域の原告146人について、50万〜100万円の慰謝料増額を命じた。帰還困難区域の住民に対する増額は認めなかった。

1審判決は額の根拠は明らかにしていなかったため、原告団・弁護団とも一定の評価をしている。東電は「判決内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。

写真は、勝訴などを掲げる弁護団=12日(クリックで拡大)

■「小名浜の真サバ」レトルトに 東北のイオンで販売始まる

イオン東北(本社・秋田県秋田市)はこのほど、東北の復興支援や地産地消、地域経済の活性化を目的に小名浜港水揚げの真サバを原料としたレトルト食品「さば煮」を新たに開発し、12日より東北地区のイオン系列のスーパー148店舗で販売を開始した。

同社によると、原料の真サバは儀助漁業(小名浜字船引場、蜩熏飼V代表取締役社長)と酢屋商店(小名浜字栄町、野ア哲代表取締役)の巻き網船団が昨年12月から今年1月にかけて漁獲したもので、県漁業協同組合連合会(県漁連)、会津天宝醸造(会津若松市)と共同開発した。

漁獲から水揚げ、急速冷凍まで10時間ほどと、鮮度の高い脂の乗った大きな真サバを厳選しており、宮城県宮城郡利府町の工場で加工したという。

販売を始めたのは、会津天宝八百匁味噌(みそ)使用の甘さ控えめの「鯖(さば)味噌煮」と甘こうじ味噌を使った「鯖甘こうじ味噌煮」、県醤油(しょうゆ)醸造協同組合の本醸造醤油を使用した会津天宝監修の「鯖みぞれ煮」の3種。

同社では昨年も同港水揚げの真サバを使い、県漁連、同社と共同開発したさば缶を販売しており、開発に携わったイオン東北商品本部水産担当の正田敬之さん(36)は「脂の乗りは良く鮮度も高い。調味料は相性に優れた味噌を使い、子どもからお年寄りまで幅広く楽しめる味になった」と県産のサバに太鼓判を押し、笑顔で商品をPRした。

イオンモールいわき小名浜内のイオンスタイルいわき小名浜では同日、店頭の一角に新商品のPRコーナーを設け、多くの利用客が興味深そうに手に取っていた。

製造数量は約3万パック。価格は2切れ入り298円(税別)、3切れ入り398円(同)。

写真は、新商品を持ちPRする正田さん=12日(クリックで拡大)