2020年3月10日(火)

■新型コロナ いわき市の繁華街にも影響 飲食店軒並みキャンセルに

新型コロナウイルスの感染拡大は、いわき市の経済にも大きな影響を与えている。特に深刻なのは、平や小名浜をはじめとする繁華街で、飲食店の予約がキャンセルされている点だ。例年ならば、2月から3月にかけては異動に合わせた送別会が企画され、大人数の予約でにぎわうところだが、政府がイベント自粛を要請したこともあって、官公庁・一般企業ともに軒並み取りやめとなっている。

「飲食店の営業も自粛すべきということか」。平字白銀町の復興飲食店街・夜明け市場の「和風居酒屋ダイニング KINKA(キンカ)」の押田将利さん(37)は、憤りを抑えながら語る。

創作和食や全国の銘酒をそろえた店として知られるが、予約が書かれた手帳を見せてもらうと、バツ印があちらこちらに。「2月は飲食店は暇と言われがちだが、中旬まではおかげさまで忙しかった」と押田さん。2月23日のいわきサンシャインマラソンの中止が決まってから、潮目が変わったと振り返る。

そこに駄目押ししたのが、政府の自粛要請だった。「基準が分からない。何人集まったらまずいのか」。いまでは延べ100人以上のキャンセルとなっている。飲食業は世の中の動きに左右されやすい。昨年10月の水害でも、同じようにキャンセルが相次いだが、押田さんの努力によって盛り返した。

押田さんは「自分たちの問題だけではない。取引先も含め、飲食業に関わるすべての人が打撃をこうむる。長期的に続いたら、業界自体がなくなってしまう」とも話す。補償についての先行きも分からない。

「これだけ自粛させておいて、オリンピックはやろうとする矛盾。常連さんのおかげで、何とかやれています」。押田さんはきょうも厨房(ちゅうぼう)に立つ。

<昼間の安定が夕方からの商売に生きる>

こうした声は他にも。同じく平字白銀町の「炭火串焼 クウカイ」の高野智博さん(39)は、3月の売り上げが半分になったと嘆く。ニワトリの平飼いはじめ、良質なメニューづくりを工夫しているクウカイ。高野さんも「送別会はキャンセルばかり。何があっても来てくれる常連さんには感謝」と言うように、状況はどこも変わらない。

高野さんは飲食業を続けるに当たって、「昼間の生活が安定してこそ、夕方からの自分たちのような商売が生きる」との持論を持つ。子どもたちが休校を余儀なくされ、普段飲みに来る大人たちの生活も変わったことで、世の中のサイクル自体に齟齬(そご)が生じたと指摘する。

「働く人たちを政府はしっかりサポートしてほしい」と高野さん。このまま自粛が継続すれば、街自体が衰退してしまうと危ぐした。

写真は、書き入れ時の週末の予約にキャンセルが出ているキンカ(一部を加工しています=クリックで拡大)

■新型コロナ 土曜日ゆえに新常磐交通への報告翌日に

7日夜にいわき市の70歳代男性が、新型コロナウイルスの感染者と判明した件で、男性がクルーズ船から下船した後の帰宅方法について、市は高速バスと公表していたが、運営する新常磐交通(本社・明治団地)に報告したのが、翌8日となっていた。市や新常磐交通に対する取材で10日、分かった。

男性は発症前だった上、乗車中にはマスクをしており、県や市は濃厚接触の可能性は高くないとしている。市によると、7日夜の段階で連絡を試みたが、土曜日だったためかなわず、8日に出勤していた従業員を通じ、必要な部署に伝えたという。

9日に「発症前の男性乗車を連絡せず」との一部報道があったが、市の担当者は最善を尽くしたと説明する。新常磐交通では早く連絡は欲しかったとしながらも、市の対応に理解を示している。

なお新常磐交通では1月末から、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、高速バス・路線バスともに消毒を徹底しており、乗務員の手洗いも励行している。また男性が7日に乗車した午後1時の車両に関しては、念のため、9日から専門の業者による消毒に入っている。

■日本公庫いわき支店 総合図書館にビジネス書寄贈

日本政策金融公庫いわき支店(奥田智則支店長)は9日、いわき総合図書館にビジネス書88冊を寄贈した。寄贈は、昨年7月17日に日本公庫いわき支店、市が締結した「地域活性化包括連携協定」に基づき、起業志望者、中小企業経営者らに参考にしてもらうのが目的だ。

書籍は日本公庫が新規開業の動向を、年度ごとに分析した『新規開業白書』はじめ、『インバウンドでチャンスをつかめ』『サービス産業の革命児たち』『中小企業の成功を支える外国人労働者』などや、融資事例集も用意している。

贈呈式は同館館長室で行われ、奥田支店長が夏井芳徳同館長に目録を手渡した。奥田支店長は「データベースが充実する総合図書館に活用していただき、ビジネス支援の拠点となることを期待しています」と、受け取った夏井館長は「図書館サービスの大きな柱になり、蔵書が増えることは大変ありがたい。市民に読んでいただき、ビジネス関連に役立ててほしい」と話した。

寄贈された一式は、5階ビジネス支援コーナーに置かれるほか、日本公庫が新たに発行した図書も今後寄贈される予定。

写真は、夏井館長に目録を手渡す奥田支店長(右)=9日(クリックで拡大)

■渡辺副市長 県に復帰へ 後任は久保氏(県避難地域復興局次長)の線

いわき市の渡辺仁副市長が3月末をもって退任し、任期を2年残し、県に復帰する方針が固まり、県では生活環境部長に就く見通しとなった。渡辺氏は平成30年4月、県総務部次長(市町村担当)から転じ、清水市政を支えてきた。

後任には県から、久保克昌避難地域復興局次長・復興担当兼企画調整部参事が就任する線。久保氏は只見町副町長、県行政経営課長などを歴任している。関係する人事案は、開会中の市議会2月定例会最終日の12日、追加提案される予定。

写真は、退任の方針が固まった渡辺氏(クリックで拡大)

■新型コロナ あすの市主催追悼式 一部変更

市は10日、11日に主催する東日本大震災追悼式について、式次第の一部を変更したと明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府主催の追悼式が取りやめとなったためで、代わりに安倍首相の追悼の辞を中継するほか、開会を10分程度遅らせ、午後2時43分からとする。

会場はいわき芸術文化交流館「アリオス」。市関係の出席者を抑えるなど規模を縮小して実施され、一般市民にもマスクの着用を求めている。