2020年3月4日(水)

■双葉町の避難一部解除 伊沢町長「万感もスタートライン」

政府は4日午前0時、東電福島第一原発事故に伴い、双葉町に出されていた避難指示について、JR双葉駅周辺の帰還困難区域を含む、一部地域で解除した。放射線量が高く、立ち入りが制限される帰還困難区域が解除されたのは初。生活インフラが整っていないため、現時点で戻る住民はいないが、令和4年春の帰還を目標としている。また4日朝からは役場機能の一部を担う場として、双葉駅に併設された町コミュニティセンター連絡所も業務を開始した。

双葉町は原発事故による全町避難が続き、平成25年6月から、いわき市東田町に役場機能を移転している。1月末現在、市内には町民の約3割に当たる2180人が避難している。

避難指示が解除されたのは、除染を進めた双葉駅周辺(0・2平方キロ)の帰還困難区域と、比較的放射線量が低い町北東部の中野・中浜・両竹地区(約2・2平方キロ)の避難指示解除準備区域。

4日は午前0時に合わせ、国道6号沿いのゲートが開放され、双葉駅周辺に残る帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の5・4平方キロに関しても、宿泊はできないが、24時間自由に立ち入れるようになった。

双葉駅わきの町コミュニティセンターでは、住民票や税証明書の交付、一時立ち入りの際の相談に応じる。時間は午前9時?午後4時。平日は毎日、いわき市から職員3人が交代で業務に当たる。事務室の隣には、自由に利用できる休憩スペースも完備する。

内閣府の線量計貸出ステーションも同じ建物に入っており、線量計の貸し出しが受けられる。時間は役場事務と同じ。

伊沢史朗町長は「避難指示解除が実現し、ふるさとへ役場機能の一部を戻すことができたのは万感の思い」と強調。ただこの日はスタートラインにすぎないとも語り、令和4年春の帰還目標を見据え、住民の健康管理やインフラ整備に尽力していく考えを示した。

避難指示の解除に続き、7日には常磐道常磐双葉IC(インターチェンジ)の供用が開始され、14日からは双葉駅を含むJR常磐線が全線で運転を再開する。

写真は、避難指示が解除された帰還困難区域だったJR双葉駅前=4日午前0時18分(クリックで拡大)

■きょうから公立小・中は休校 働く保護者に学童対応

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、いわき市の公立小・中で4日から、臨時休校が始まった。市内には小学生を受け入れる放課後児童クラブ(学童保育)が68カ所あるが、いずれも働く保護者のため、朝から子どもたちを預かっている。

平下神谷の磐城高等芸術商科総合学園に併設された「青陽児童育成クラブ」では、臨時休校による新たな1人を含め、計20人を受け入れている。夏休みなどの長期休業と同じように、朝から夕方にかけて、勉強や遊びの時間を設けており、教室には元気な子どもたちの姿があった。

感染予防に当たっては、子どもたちに手洗い・うがいの励行を呼びかけているほか、6人の支援員が頻繁にアルコール消毒を行っている。市は2日付で、放課後児童クラブに対して通知を出しており、可能な限りの児童受け入れを要請した。また清水市長は運営に際して、追加で生じる費用の支援も明言している。

写真は、青陽児童育成クラブで過ごす子どもたち=4日(クリックで拡大)

■マラソン中止に質疑相次ぐ 市議会 経過に疑問の声上がる

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中止となった2月23日の「第11回いわきサンシャインマラソン」。実行委員会はマスクやアルコール消毒液を準備し、2年ぶりの大会実施を模索したが、同17日に東京マラソンが一般参加を取りやめた辺りから風向きが変わり、同19日夕方に中止が発表された。

さまざまな意見に加え、こうした経過もあって、3日の市議会2月定例会では、市長提案要旨説明に対する質疑で話題に挙がった。

<情報発信と緊急事態の意思決定を問う>

永山宏恵議員(志帥会)からは、大会中止に関する情報発信の問題が示された。まず最終判断が2月19日午後4時からの運営委員会にもかかわらず、同日昼ごろから、インターネット上で大会中止が流れた点だ。

これに対し、緑川伸幸市特定政策推進監は、実行委員会事務局として、2月19日午後に市民から指摘があるまで把握していなかったと答えた。実は開催中止による食品ロスの削減や、不要な支出を抑制するため、2月19日午前の段階で、大会が中止になる旨が、市執行部から納入業者に伝えられていた。永山議員によると、口外しないよう指示されていないケースもあったという。

永山議員は情報管理のあり方や、緊急事態が起きた場合の意思決定を重ねて問うた。緑川氏はやむを得ない措置としながらも、連絡手法や伝達内容などに課題があったとし、チェックリスト作成などの再発防止に向けた改善策を、実行委員会で協議すると説明。

今回のように想定を超える際には、一定条件の下、大会長の市長が判断できるルールづくりも必要と述べた。

<中止に伴う宿泊キャンセル>

伊藤浩之議員(共産党・市民共同)からは、大会参加者の宿泊について提起された。市によると、県外参加者はエントリー総数1万281人のうち、約4割に当たる4092人。遠方からの参加者は大会公式の案内として、市旅館・ホテル業連絡協議会を通じるか、自らの手で宿泊先を確保している。

宿泊先にもよるが、3日前からキャンセル料が生じるケースが多い。伊藤議員は「参加者が経済的損失を被る恐れがある」と指摘する。一方、緑川氏はホテル等ごとに、取り扱いが異なるため、一元的な対応は難しいとし、大会中止によるキャンセル料は、宿泊施設と相談するよう事前に周知していると述べるにとどめた。

■県立高の入試始まる 初の前期選抜 合格発表は16日

県立高入試として、今春から導入された新制度「前期選抜」が4日、いわき市を含む県内一斉に始まった。市内では全日制15校・定時制1校に計2515人が志願しており、6日までの3日間の日程で行われる。

県立高入試は昨春までの自己推薦に当たるI期選抜、一般入試に当たるII期選抜を統合し、特色選抜と一般選抜を含めた前期選抜と改め、すべての生徒に学力検査を課すことを決めた。特色選抜はI期選抜と同じく自己推薦の形を採っているが、学校ごとに教育内容ごとに応じ、志願してほしい生徒像を設定している。

平字桜町の磐城桜が丘高でも、朝早くから受験生が集まり、使い慣れたノートや参考書を手にしながら、最後の確認を進めていた。受験生のほとんどがマスク姿だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、校内にはアルコール消毒液が用意されるなど、万全の対策が施されていた。合格発表は16日。

写真は、最後の確認を進める受験生=4日、磐城桜が丘高(クリックで拡大)