2020年2月14日(金)

■常磐線全通まで1カ月 雨宮・水戸支社長に話聞く 特急増発に前向きな姿勢

東日本大震災・東電福島第一原発事故に伴い、不通となったJR常磐線富岡(富岡町)―浪江(浪江町)駅間の運行が再開し、常磐線がおよそ9年ぶりに全線開通を迎える日まで、14日で1カ月となった。いわき―仙台駅間の鉄路が復活することは、浜通りの復興にも大きな影響をもたらすが、JR東日本の雨宮慎吾執行役員水戸支社長は、いわき民報社のインタビューに対し、「地域の皆さまの期待を感じる。身が引き締まる思いだ」と語った。

沿線の関係者からは、常磐線の早期の全線開通とともに、特急列車の復活が求められたと振り返る雨宮氏。「1日3往復の品川・上野―仙台駅間の特急が実現し、そうした要望に応えられたと思う」と話す。本紙記者が利便性向上に向け、特急列車の増発の可能性を問うと、雨宮氏は「今後お客さまのご利用状況を見て、ダイヤ改正の機会に対応していきたい」と前向きな姿勢を示した。

全線開通に当たっては、原発事故の問題は避けては通れない。雨宮氏は「除染の対策が一番難しかった」と率直に明かす。表土除去や、バラストと呼ばれる線路の砂利をすべて取り換えたりと、JRが管理する部分はもちろん、その周囲も環境省や沿線自治体の協力を得て、放射線量の低減を図った。

安全運行にも心を配っている。例えば原発事故後に増えたイノシシと衝突しないよう、両脇に高さ約1・5メートルの柵を設置したほか、仮に入り込んでも出られる通路を用意しているという。線路の周りは原発事故による帰還困難区域も残るが、万が一、長時間停車するような事態を踏まえ、雨宮氏は「ちゃんと除染された中で、お客さまにお乗り換えしてもらえる」と強調する。

大野(大熊町)―双葉(双葉町)駅間は上り線を道路に転用しており、その他の区間も敷地内にバスが乗り入れられる。6日には異常時対応総合訓練も行われ、万全を期している。乗務員の健康管理にも配慮し、国も車内の空間線量は問題ないレベルとしているが、積算線量計を携帯させる。保守作業については、新たな機械を導入することで、迅速な整備を可能とする。

雨宮氏は「わが社としても、これからを復興の第2ステージと位置付けている」と相好を崩す。5月からは「浜街道復興応援キャンペーン」も計画しており、観光交流人口の拡大に、引き続き浜通りのためにまい進していくと誓った。

写真は、いわき民報社のインタビューに応じる雨宮氏(クリックで拡大)

■希少な「ケイマフリ」 小名浜港で確認

環境省のレッドリストで絶滅危惧種II類に指定され、主に北海道・天売島や知床半島・斜里町、青森県の一部で繁殖する海鳥「ケイマフリ」が小名浜港湾内で目撃され、愛鳥家を中心に話題となっている。

目撃例を参考に観察を続け、8、10、11日と3度にわたり写真撮影に成功したふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」の獣医師平治隆さんによると、同種は同館で人気の高い海鳥のウミガラス、エトピリカの仲間で、北海道と青森県では希少になりつつあり保護の動きが加速している。繁殖地から南下し常磐沖での目撃例もあるが、本市沖で確認されるのは珍しいという。

平さんもいわきで見るのは初めてといい、驚きながら「群れる鳥ではなく単独でいても不思議ではない。パッと見で当館のエトピリカと同サイズの700グラム前後。冬羽か、繁殖時期とは色が異なっていた」。名前はアイヌ語で<赤い足>を意味し、鳴き声の美しさから<海のカナリア>とも呼ばれるという。

震災後、本県沖は水産資源の回復が著しく、カマイルカなど豊富なエサを追って小名浜港湾内に入り込む<珍客>が相次いでいる。海鳥にとっても好漁場となったのか、本県沖の豊かさを象徴する来訪といえそうだ。

写真は、小名浜港で確認された海鳥「ケイマフリ」=平さん撮影(クリックで拡大)

■旧小名浜測候所の梅開花 平年より6日早く

小名浜まちづくり市民会議(小沼郁亙会長)は13日午後、小名浜特別地域気象観測所(小名浜字船引場、旧小名浜測候所)の敷地内にある標本木のウメの花が開花したと発表した。平年より6日、昨年より12日早い開花となった。

同観測所では平成20年に無人化されてから、ウメやサクラ、ツバキ、初氷、初霜、初雪、動物の初鳴きなどの生物季節観測は行われていない。

小名浜の風物詩を残そうと、同市民会議が気象庁O B とともにウメとサクラのみ開花観測と発表を続けており、今年も旧小名浜測候所で解説官をしていた島田栄二郎さん(76)=常磐西郷町=が観測を続け、12日に2輪、翌13日午前中に開花の指標でもある5輪を超える10輪が一気に開花しているのを確認した。

同日は4月下旬から5月上旬並みの14・9度を観測する陽気となったことから、一気に開花が進んだとみられる。市民会議ではソメイヨシノの開花と満開時期も観測する予定で、昨年は3月29日に開花し、4月8日に満開を迎えた。

写真は、開花した小名浜特別地域気象観測所のウメ=13日(クリックで拡大)

■サモア重量挙げ代表来市へ 7月に事前キャンプ実施

市は13日、2020年東京五輪・パラリンピックのホストタウン相手国のサモアから、事前キャンプとして、ウエイトリフティングの代表チームが7月中旬から下旬にかけて、来市すると明らかにした。サモアはウエイトリフティング男子96キロ級で、ドン・オペロゲ(20)が東京五輪の出場を決めている。

市によると、代表チームの陣容は4月ごろに固まり、オペロゲを含む選手3人・スタッフ5人が参加する見通し。オペロゲについて、シラ駐日大使は「メダルが取れる選手」と語っているという。事前キャンプに当たっては、市とサモアの協会で合意書を交わす準備を進めている。

事前キャンプは市立総合体育館をメインとし、五輪本番と同じバーベルを用意し、大会に向けての調整を図ってもらう。またサモアは7人制ラグビーも、五輪出場を目指しており、決定した場合は、ウエイトリフティングと同じく事前キャンプを実施する。

いわき市とサモアの関係は古く、常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)のショーをきっかけに、平成27年の第7回太平洋・島サミットから本格的に交流を深めた。昨年のラグビーワールドカップでは、いわき市でサモア代表が事前キャンプに臨み、市民と触れ合う機会も設けられた。

写真は、サモアのウエイトリフティング代表チーム。オペロゲは上段右から2人目=市提供(クリックで拡大)