2020年2月13日(木)

■市の新年度当初予算案 一般会計は1489億7889万円 社会保障費の増加目立つ

清水市長は13日、いわき市の令和2年度当初予算案を発表し、一般会計の総額は1489億7889万4000円(前年度比126億5773万円、9・3%増)と明らかにした。2年連続で前年度を上回っており、直近5年間としては最も大きい。東日本大震災の復興関連経費は収れん傾向にあるが、昨年10月の台風19号・大雨に対応する経費に加え、幼児教育・保育の無償化制度の導入などによる社会保障費の増加が背景にあるという。

当初予算の発表に当たって、清水市長は「災害を克服し、共に創る『いわき新時代』の礎となる、未来につなぐいわきの復興・創生予算」と説明。東日本大震災からの復興を総仕上げし、将来を見据えながら、魅力あふれるまちづくりを進める思いを込めた。

復興関連経費は、86 億3220万4000円(前年度比12億2701万4000円、16・6%増)。東電福島第一原発事故に伴い、放射性物質が底質から検出された農業用ため池の低減や、清掃センターに一時保管されている指定廃棄物以外の飛灰処理によって、過去最少の前年度からは伸びたが、「(来年度の)復興・創生期間の終了によって一区切り」(沢田洋一市財政部長)つくとしている。

新年度は新たに、台風19号などの対応関連経費として、9億7367万2000円を計上した。河川の氾濫・決壊で被害を受けた根小屋、下平窪ポンプ場の本復旧工事に、3億922万5000円を盛り込んだのを筆頭に、施設復旧や市民の生活再建、事業所の経営基盤安定を図っていく。

まちづくり経費は、170億7767万3000円(前年度比29億3282万3000円、20・7%増)。いわき駅並木通り地区市街地再開発事業に対し、前年度の約1・5倍に当たる23億3866万8000円を充てたほか、消防車両の整備や、小規模特別養護老人ホーム建設補助金、自転車道路網整備事業によって、大幅増につながっている。

写真は、新年度の当初予算案を発表する清水市長=13日(クリックで拡大)

■市がドローン使った広報を 台風19号教訓に 今秋までに実証実験の計画

市は新年度、昨年10月の台風19号に際し、発災直後に被災者にうまく情報が伝わらなかった教訓から、小型無人機「ドローン」を使った広報活動として、「災害時ドローン活用情報提供・調査実証事業」を始める。13日発表の新年度当初予算案に、事業費350万2000円が盛り込まれた。

台風19号では夏井川などの決壊・氾濫もあって、被害が甚大な地区では必要な行政情報を回覧することが困難となり、スマートフォンなどを持たない高齢者を中心に、情報が得にくい状況が生まれた。市では広報車も活用したが、災害廃棄物が運行の支障となったほか、内容が聞き取りにくいとの苦情もあった。

こうした点を踏まえ、ドローンに搭載したスピーカーによって、上空から情報を伝えることで、市民が迅速かつ的確な行動が取れるほか、安心感の醸成も図られ、災害対策が円滑に実施できると期待される。今秋までにドローンを飛ばす実証実験を計画しており、実際の聞こえ方や対象範囲といった内容を確認。実施場所は台風19号で生じた被害を基に、平地区の夏井川沿いと、土砂崩れが起きた中山間地を予定する。

実証実験に当たっては、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を柱に、ドローンの運用に取り組む企業と協定を締結し、事業を委託する考えだ。情報を伝えるのと合わせ、ドローンに被災地の様子を空撮させ、被害状況の地図への落とし込みも想定している。

またドローンに、被災者に必要な物資を運搬させる構想も練っている。県内では平成30年11月から、南相馬市小高区と浪江町の2つの郵便局間を、ドローンが荷物を運んでいるなど、全国的にドローンによる輸送が実用化しており、実現する可能性は高い。

ドローンを災害対応に活用する例としては、宮城県仙台市が昨年11月、東日本大震災による津波被災の経験から、上空から大津波警報の発表をアナウンスした上で、避難所まで誘導する実証実験を行った。ただ情報発信に特化したドローンの取り組みは、全国的にも非常に珍しく、いわき市が先進事例とみられる。

■きのう夜 平四ツ波、平字梅本で震度4 震源は福島県沖

12日午後7時37分ごろ、福島県沖を震源とする地震があり、平四ツ波、平字梅本で震度4を観測した。気象庁によると、震源の深さは約80キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は5・5と推定される。

小名浜、三和町、錦町では震度3だった。この地震による津波の心配とけが人はなかった。東京電力によると、大熊町などで最大震度4の揺れだったが、福島第一・第二原発に新たな異常はみられない。