2020年2月12日(水)

■市と金属加工「ニッチュー」協定 来年1月に四倉で新工場稼働 地元雇用も積極的に

金属の表面処理などを手がける「ニッチュー」(本社・東京都台東区)は12日、いわき四倉中核工業団地で来年1月に新工場を稼働させる計画に合わせ、市と「工場立地に関する基本協定」を結んだ。

ニッチューは研削材の新規製造や、ブラストマシンと呼ばれる表面加工機械の生産拡張、受託加工の業務拡大に向け、いわき市に進出することを決めた。本社で担っている技術部門の一部も移転する方針で、地元雇用も積極的に進めるという。

締結式は市役所第3会議室で行われ、ニッチューの平塚勝朗代表取締が、清水市長と協定書を取り交わした。いわき四倉中核工業団地の事業主体として、鈴木勉県いわき地方振興局長が見届け人を務めた。

ニッチューは昭和34年、粒体を衝突させ、金属などを加工するメーカーとして発足。この技術は幅広い分野で応用され、鉄工業や自動車関連産業に加え、貨物列車や新幹線のブレーキ性能向上にも生かされている。

東日本大震災・東電福島第一原発事故からの復興にも貢献しており、福島第一原発で生じた汚染水を浄化した後の処理水を保管するタンクに関して、解体に当たっての除染に役立っている。

新工場は敷地面積約1万400平方メートル。規模面積約4324平方メートル。初年度の地元雇用として、正規7人・非正規10人の採用を予定している。設備投資金額は12億8600万円の見通し。

基本協定では、ニッチューの円滑な進出を実現するため、市は工場立地や従業員採用、域内連携に協力し、ニッチューも地元雇用などに配慮していく。

協定締結に際し、清水市長は「操業開始が円滑に進むよう、従業員の採用や市内事業所との連携などに、誠意を持って協力したい。復興創生のさらなる加速に向け、官民挙げて取り組んでいく」と語った。

平塚社長は「いわきの皆さんが『入りたい』『入って良かった』と思える楽しい会社をつくり、この地をけん引できるような働きをしたい」と意気込みを示した。

写真は、協定書を手にする清水市長、平塚社長、鈴木局長(左から)=12日(クリックで拡大)

■台風上陸から4カ月 平下平窪地区に本社通じて寄付

いわき市に甚大な被害をもたらした昨年10月の台風19号は、12日で上陸から4カ月を迎えた。夏井川など市内河川が決壊・氾濫した影響で、いわき市では9人の尊い命が犠牲になったほか、市の最新のまとめによると、台風に続く昨年10月25日の大雨と合わせ、住宅被害は7001棟、被害総額は380億8038万6000円に上っている。

いわき民報社は12日、台風19号の被害の大きかった地区の一つ・平下平窪地区に対し、オーストリア・ウィーンの「『絆』プロジェクト・ウィーン」から寄せられた善意として、現金32万7000円を贈呈した。

「絆」プロジェクト・ウィーンは東日本大震災を受けて発足し、毎年チャリティーコンサートを企画している。これに合わせ、平出身で、ウィーン在住のコーイエダー・酒井ゆかりさんが先ごろ、古里の水害に心を痛め、トロンボーン奏者でもある夫のエーリッヒ・コーイエダーさんとともに、自宅サロンで演奏会を催した。

自宅サロンで開かれた演奏会には、プロの音楽家やアマチュアの合唱団が出演し、約80人の来場者が異国の復興を願って寄付をし、いわき民報社に日本円で現金42万7000円が寄託された。

贈呈式は12日、市の台風19号に関する検証委員会に先立ち、市役所危機管理監室で行われ、平下平窪区の佐藤将文区長に手渡された。山田誠市危機管理監が同席した。佐藤区長は「大変ありがとうございます。必要な物品の購入などに使わせていただきます」と述べ、平下平窪地区の復興にまい進すると誓った。

なお「絆」プロジェクト・ウィーンから寄託されたうち、平中平窪の「絆」プロジェクトいわき支部に現金10万円を贈っている。

写真は、浄財を手にする佐藤区長(左)と同席した山田危機管理監=12日(クリックで拡大)

■市文化協会の創立50周年式典 心豊かなまち「いわき」を

市文化協会(田村学会長)の創立50周年記念式典が11日、小名浜住吉のカルチェ ド シャン・ブリアンで開かれ、所属団体の関係者ら約130人が出席した。

市文化協会は昭和44年6月、5市合併以前の旧市町村で活動していた95の団体が市文化団体連絡協議会として結成。平成11年に現名称に改め、文化春祭り、県芸術祭の開催などを行っている。

式典では、田村会長が「市文化協会が活動、継続できるのも、先輩諸氏が築き上げてきた伝統の力によるものです。今後も市民に定着し、心豊かな生活を送れる文化のまちいわきを目指していきたい」とあいさつした。

清水市長、菅波健市議会議長の来賓祝辞に続き、創立50年経過団体に表彰が行われ、田村会長から各団体の代表者に「継承」の色紙が手渡された。

祝賀会では、いわき舞踊連盟の柳紅蘭さんの祝舞披露に続き、吉田尚市教育長の発声で乾杯した。 席上、田村会長に花束贈呈、各所属団体の芸能披露などが雰囲気を盛り上げるなど、出席者全員でさらなる発展を誓い合った。

受賞団体は次の通り(かっこ内は創立年)。

▽地区=常磐地区文化協会(昭和23年)勿来地区文化協会(同42年)▽連合・連盟=いわき三曲連盟(昭和35年)いわき短歌連盟(同44年)いわき市華道連合会(同)▽単独団体=平喜多会(明治28年)いわき宝生会(大正14年)いわき観世流連合会(昭和24年)横山慶子舞踊学園(同30年)睦真子バレエ研究所(同32年)いわき民謡保存会(同33年)一般社団法人詩吟朗詠錦城会認可福島県本部(同34年)いわき美術協会(同39年)いわき演劇鑑賞会(同)ランプ画会(同43年)平民謡会(同44年)聖雲書道会(同)劇団いわき小劇場(同)

写真は、創立50周年記念表彰を受ける団体代表者=11日(クリックで拡大)

■アクアマリンの「たろうがま」 炭焼き作業が佳境に

海洋環境の保全に向けて森林資源の重要性を伝えようと、ふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」が取り組んでいる炭焼き作業の今季分の作業が佳境に入り、9日には寝ずの番で炭焼き窯を見守ってきたボランティアスタッフが炭火を消す作業に汗を流した。

窯は日本古来の文化を周知しようと、一昨年の世界水族館会議に合わせて屋外施設「わくわく里山・縄文の里」の一角に作られた。

「多様性豊かな海をつくるには豊かな森が必要」との信念から、森林資源の有効活用や林業の振興に役立てたいという安部義孝館長の想(おも)いが込められ、窯の名前は形状が亀の甲羅に似ていることなどから四倉町の浦島太郎伝説にあやかり、「たろうがま」と名付けられた。

完成した炭は「たろうがま炭」ブランドで同館ショップでも販売されており、今回も身近な森林資源の豊かさを感じてもらおうと、阿武隈山系のナラやカシ、ケヤキ、サクラ約200`を原材料とした。

今月7日正午ごろに火入れし、2昼夜、2時間置きに火力などを微調整して9日朝に火を止めた。作業には安部館長と交流の深い陶芸家の本多博史さん、川部町で造園業を営む蛭田一雄さん、友人の山ア陽司さんが携わり、火を止めるとともに膨張してヒビ割れを起こす窯の補修作業に汗を流した。

「海山川の好循環を意識することが大切で、魚たちは森の栄養分に依存している。目を向けるきっかけとしたい」と安部館長。窯は冷却し、16日には炭出し作業を行う予定だ。

写真は、窯を補修する本多さん(手前)たち(クリックで拡大)