2020年1月7日(火)

■清水市長 新春記者会見「災害を克服する力強いまちを」

清水市長は7日、市役所第8会議室で、報道各社に向けた新春市長記者会見を行った。東日本大震災・東電福島第一原発事故から間もなく9年となる中、いわき市は昨年10月、台風19号と続く大雨による被害に見舞われたことを踏まえ、清水市長は「多くの先人の手で大切に守られてきた『ふるさと・いわき』を、しっかりと未来につないでいくことが、私たちの大事な使命」と強調し、今年は「災害を克服する力強いまち・いわき」にまい進すると誓った。

新春市長記者会見に当たって、清水市長は改めて昨年10月の水害を振り返り、市民生活や事業運営の再建に向けて尽力する考えを示した上で、「発災前よりもさらに強靭(きょうじん)な防災・減災の仕組みが必要不可欠」と指摘。昨年12月に設置した検証委員会を通じ、将来にわたって災害に強いまちづくりを進めると述べた。

市政運営のうち、震災・原発事故からの復興の総仕上げとして、震災メモリアル事業の中核拠点施設「いわき震災伝承みらい館」の5月の供用開始、令和3年度の完成を目指す四ツ倉駅跨(こ)線人道橋の整備、原発事故による風評払しょくや、適正な損害賠償の継続などを説いた。

また、いわき新時代への挑戦として、昨年に引き続き「スポーツ・健康・エネルギー」の3つのテーマを設定した。具体的には、2020年東京五輪などを念頭にした「国際的なスポーツ大会を本市の未来につなげる」、人生100年時代にふさわしい「健康長寿の実現を目指す」、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想等に基づく「将来を見据えた次世代エネルギー社会を構築する」の考えを柱とする。

官民一体のまちづくりを実現するため、市が標ぼうする「共創のまちづくり」に合わせ、「地域人財の育成・ひとづくり」「地域価値の向上・まちづくり」「地域産業の振興・しごとづくり」も求めていく。

写真は、新年に当たって記者会見をする清水市長=7日(クリックで拡大)

■伝統の「松送り」 江名港で行われる

90年以上の歴史を持つ江名区主催の松送り行事が7日、江名港で行われ、地区住民約1000人が訪れた。行事では、自宅から持ち寄った正月飾り、ダルマなどを燃え盛る火にくべ、今年1年の無病息災、家内安全、学業成就などを願った。

金成克哉江名区代表区長(84)は、「神々への信仰が薄れる中、こうした行事は長く続けていきたい」と話した。

写真は、正月飾りなどを焼く江名地区の住民=7日朝(クリックで拡大)

■来年度「健康づくりサポセン」新設 ゆったり館に

市は来年度、健康にあまり関心のない市民を対象に、身体づくりに当たる「健康づくりサポートセンター」を、常磐湯本町の市健康・福祉プラザ「いわきゆったり館」に新設する。清水市長が7日、新春市長記者会見で概要を明らかにした。

清水市長は昨年、市民の健康指標改善を目指し、「いわき市健康元年」との考えを打ち出し、健康データの収集・分析、健康づくり推進課や、官民一体による組織「健康いわき推進会議」の設置などを図ってきた。

今年もこうした取り組みを継続し、27日には健康長寿のノウハウを共有しようと、先進自治体の長野県佐久市と連携協力協定を交わす。

市によると、健康づくりサポートセンターは、ゆったり館の空きスペースを活用し、健康運動指導士や管理栄養士ら専門職を配置し、運動や栄養、健康の相談・指導を一体的に実施する。サポートセンター利用者の健康に対する意識付けにつなげ、運動習慣の醸成と生活習慣の改善を実現させる。

■川前で産地形成モデル事業 ネギや小白井きゅうりなど選定

市は来年度、中山間地の川前地区を対象に、特色ある農産物を通じた産地形成のモデル事業を始める。昨年10月の台風19号と続く大雨の被害では、中山間地も大きな被害を受けており、市ではなりわいの形成が、安心して地域で暮らしていく基盤となるとし、モデル事業の実施を決めた。

清水市長が7日、新春市長記者会見で概要を明らかにした。川前地区のモデル事業では夏秋ネギ、インゲン、ピーマンに加え、伝統野菜の小白井きゅうりを選定。JAと連携しながら、流通のあり方や消費者の反応を探っていく。

いわき市でも農業の生産性向上は急務となっており、担い手の育成などとともに、地区ごとに魅力ある農産物を示し、地域活性化を図っていく。

■市民の盛り上がり勘案したい 清水市長 スタジアム議論に

サッカー・いわきFCは今季から、日本フットボールリーグ(JFL)に戦いの場を移すが、さらにカテゴリーが上がり、Jリーグ3部(J3)に昇格した場合、いわき市には規定を満たすスタジアムがない。

スタジアムの議論に関して、清水市長は7日、新春市長記者会見の席上、「いわきFCの活躍と、市民の盛り上がりを総合的な勘案していく必要がある。今後も(いわきFCを運営する)いわきスポーツクラブと話し合いをしていきたい」と語った。

またJFL昇格については、「チームの躍進は、復旧・復興に取り組む本市にとって明るいニュース」と今後に期待感を示した。

市は昨年6月、「スタジアムを中心としたまちづくり事業可能性調査」を公表し、市内ではいずれもスタジアム運営は赤字となる結果が出された。一方、いわきスポーツクラブは、従来の運営にとらわれない考えで、黒字化を目指していく構想を描いている。

■処理水の海洋放出 引き続き反対の姿勢 清水市長「国・東電は受け止めを」

清水市長は7日、新春市長記者会見の席上、東電福島第一原発で生じる汚染水を浄化した後の処理水の問題で、取りざたされている海洋放出に対して、「風評被害など国の責任で取り組むことが前提でないと、地元としては認められない」と、引き続き反対する姿勢を示した。

昨夏には市内4カ所で海水浴場が開設されたほか、今年は6月に四倉海岸で、サーフィンの主要大会「第38回全日本級別サーフィン選手権大会」が開催されることを踏まえ、清水市長は「福島の海は安全・安心でないといけないと、国・東電にも受け止めてほしい」とも注文を付けた。