2019年12月11日(水)

■遠野和紙 広野小の卒業証書に 特産バナナの茎用いて

いわき市遠野町で400年以上の伝統を持つ「遠野和紙」の技術が、広野小の卒業証書に使われることが決まった。流通大手・イオンが協力し、広野町の特産として、9月から出荷されているバナナの茎を用い、コウゾと合わせてつくられる。

6年児童32人による紙すきが11日、広野小で行われ、一人一人の思いが詰まった和紙を仕上げた。

遠野和紙は昭和40年代に作り手が1軒のみとなり、一時は途絶えたが、地域おこし協力隊によって復活。昨年10月から平山祐(37)、綾子(32)さん夫妻が移住し、本格的に根付かせている。

今年10月には、ニュージーランド出身のシルビア・ギャラハーさん(25)も加わり、広野小には3人で指導に訪れた。

広野町は東電福島第一原発事故からの復興を願い、バナナの栽培を進めており、余った茎をバナナペーパーに転用することを思い立った。

平山さん夫妻は、通常の遠野和紙と比較し、バナナの茎による和紙は黄色みがかっており、香りもバナナの感じがすると話す。祐さんは「子どもたちにとっては、一生の宝。ここからどう風合いが変わるか楽しみです」と語る。

イオンでは和紙の制作とともに、福島市の段ボールメーカーと連携し、広野町のバナナペーパーによる名刺用紙などを商品化し、将来にわたっての復興支援に当たる構想を描いている。

写真は、綾子さんの指導で紙すきをする児童=11日(クリックで拡大)

■自主防災組織の充実を 台風19号で改めて重要視される

市は台風19号や続く大雨での被害を踏まえ、地域住民が主体となって防災活動に当たる「自主防災組織」の役割を改めて重要視している。

市によると、4月1日現在、市内には405組織が結成され、組織化されている行政区の割合では81・4%となっている。主に行政嘱託員らで構成されており、未結成の地区に対しては、粘り強く働きかけるとしている。

また市は自主防災組織の広域連携も目指しており、市内13地区の単位で、消防団などの防災機関・団体を含めた「(仮称)地区防災連絡協議会」の設置を推進している。

現時点で四倉、小川、三和、田人、久之浜・大久、川前の各地区でつくられており、それぞれ地域の実情に合わせた体系としながら、平時から情報共有を進めている。

こうした連携によって、災害時に地区内のほかの自主防災組織を通じ、共助の精神が図られることも期待される。市は既存の集まりの延長で構わないとしており、残りの地区にも積極的に働きかけていく方針を示す。

一方で市は自主防災の姿勢に関して、地区ごとに温度差がある点も認めている。市に提出される実績報告書や活動報告書に加え、研修会の参加状況から推測すると、訓練の実施有無や、防災体制の役割分担に差が表れているという。それぞれの意識を高める必要性を強調する。

今後のあり方に当たっては、地域防災力の向上に「防災士」が大きな役割を担うとし、8月に取ったアンケートの分析から、自主防災組織をけん引するリーダーとして、活動しやすい仕組みづくりを検討する。市によると、資格を取得したのは303人。

自主防災組織には、インターネットの活用も効果的と考えており、気象情報の取得といった講習を通じ、ネット対応力も高める意向だ。

山田誠市危機管理監が10日、市議会12月定例会の席上、木村謙一カ議員(志帥会)の一般質問で、自主防災組織の取り組みを答え、災害に強いまちづくりに努めていくと語った。

■5水系の指定強く働きかけ 浸水ハザードマップ作成に向けて

市は県に対し、浸水想定区域が未指定の市内河川について、浸水ハザードマップの作成に向け、指定するよう強く働きかける方針を示した。

市によると、県が管理する2級河川11水系のうち、夏井川水系や鮫川水系などの6水系18地区で、ハザードマップがつくられている。一方で、残る末続川水系や弁天川水系などの5水系は、水防法に基づく水位周知河川に指定されておらず、浸水想定区域も指定されていない。

市では、流域住民の安全・安心を図る観点から、ハザードマップは重要と考えている。台風19号や続く大雨では、浸水したエリアとハザードマップはおおむね一致していた。

根本英典市土木部長が9日、市議会12月定例会の席上、木村謙一カ議員(志帥会)の一般質問に対し、こうした意向を明らかにした。

■市HPアクセス数 台風発災から3週間で直近の10倍に

台風19号や続く大雨によって、市のホームページの1日当たりのアクセス数が、発災からの3週間で、直近半年間の10倍に上ったことが分かった。市によると、4〜9月の半年間は約2万5千件だったのに対し、10月12〜31日は約25万件となっている。

また11月の1カ月間も約4万件で、依然として高い水準を記録しており、市民らが公的な情報を求めたことがうかがえる。

一方、アクセスの急増に伴い、システムは正常だったが、ページの表示に時間を要した可能性も指摘する。他の自治体では災害用ページを設け、文字だけの情報にすることで、通信量を抑制に成功した事例があったため、市でも導入を検討していく考えを示した。

大和田洋市総合政策部長が9日、市議会12月定例会の席上、大友康夫議員(つつじの会)、坂本稔議員(創世会)の一般質問で明らかにした。

■東京消防庁の隊員 書類送検 台風19号で救助中のヘリから女性落下

いわき市平中平窪で10月13日、台風19号に伴い、77歳女性が浸水区域から救助された際、ヘリコプターに収容中、落下して死亡した事故について、いわき中央署は10日、業務上過失致死の容疑で、救助に当たった東京消防庁の32歳と33歳の男性隊員を書類送検した。

事故は10月13日午前10時2分ごろに発生。いずれの男性隊員も、女性を救助する中で金具を取り付ける手順に抜けがあり、女性に必要な金具が取り付けられず、上空40bから誤って落下させ、死亡させた疑いが持たれている。

女性の死因は多発性外傷だった。

写真は、事故直後の東京消防庁ヘリコプター「はくちょう」=10月13日(クリックで拡大)

■いわき市役所 冬のボーナス支給される

市は10日、職員に冬のボーナスを支給した。総支給額は一般・特別職3664人に対し、26億7366万8839円だった。県人事委員会勧告に準じた給与勧告が行われ、期末手当が平準化されたことから、総支給額は前年比0・57%減だった。

一般職員の支給率は、12月期末・勤勉手当合わせて2・2月で、昨年と比べて0・025月減った。一般職員の平均は42歳2カ月で支給額は65万627円。前年(平均41歳10カ月)と比較し、伸長率はマイナス1・28%だった。

特別職の支給率は12月期末手当として、前年より0・025月減の1・65月。支給額は市長が215万6220円、副市長が2人で計229万3434円(1人は10月1日就任)、教育長が153万2520円。

代表監査委員が132万660円、水道事業管理者が153万2520円、病院事業管理者が155万340円。

市議は議長が138万6000円、副議長が130万6800円。正副議長を除く議員34人は、1人当たり124万7400円。