2019年12月7日(土)

■マリンタワーと白雪の富士山 撮影に成功 山田町の空撮家・酒井さん

モーターパラグライダーに乗って、上空から変わりゆくいわき市の姿を撮影している空撮家酒井英治さん(55)=同市山田町大津=が、いわきマリンタワーからいわきの海岸線、阿武隈の山並み越しに、雪をかぶった富士山の撮影に成功した。

酒井さんは空撮歴25年のベテラン。これまでDVD「かもめの視線」3シリーズや、「東日本大震災 いわき沿岸津波被害の記録」などを世に出しているが、5年前から、今まで誰も成し遂げていない、いわきの上空から海岸線越しに富士山の姿をカメラにおさめることに挑戦してきた。

いわきから富士山までは直線距離で250キロほど。その間には広い関東平野や首都圏の都市部、多摩・丹沢の山々などがあり、これに複雑な気象条件などが絡んで遠望は難しいが、阿武隈高地の北部には遠望北限(約300キロ)の山があり、市境にある三株山や朝日山からも、富士山頂の撮影に成功した例はある。

平成28年の大みそか、酒井さんは泉町下川の照島上空から初めて、海越しの富士山を撮影することに成功したが、あくまでも塩屋埼灯台と並ぶ、いわきの海のランドマークである「いわきマリンタワーといわきの海を入れた富士山の写真を撮影する」ことを最終目標にしていた。

酒井さんはコンピューターやGPSを使って、空撮位置をシミュレーションし、三株山に設置された富士山ライブカメラや福島海上保安部のホームページで、いわき沖の気象条件を確認しながら何度か撮影飛行を試みた。

そして撮影の条件がそろったものの、この冬一番の寒波に見舞われた11月29日、薄磯海岸から離陸し、午前9時すぎ、中之作港上空928メートルから、いわきマリンタワーと海岸線を入れた268キロ先の富士山の撮影に成功した。

生身の体をさらしながら寒さと闘い、フライトは約20分が限界。「エンジンの不調と予想以上に強い北西からの風で海側に流されたが、目標を掲げて5年、前回の富士山撮影から3年越しでようやく夢を果たせた」と喜ぶ。

カメラが趣味で、都心から撮影した富士山の写真が特選を受賞したことがある小名浜生まれの父親、実家が富士山を見上げる山梨県大月市の母親をもつ酒井さんならではの快挙だった。

写真は、いわきマリンタワーと小名浜港越しの富士山。富士山は左上(クリックで拡大)

富士山部分の拡大は以下の通り。(同)

■平下平窪で炊き出しの善意 夏井川決壊から間もなく2カ月

台風19号の影響で夏井川が決壊し、広い範囲で浸水した平下平窪の健康の森平窪店で、ボランティアによる炊き出しが行われた。

炊き出しは、地元で被災者を支援する「ママcafeかもみーる」の千葉由美さん(50)が主導し、新潟市で屋台などを営む「FPF(フード・プロセス・フリーダム)」らが協力した。

会場となった店舗駐車場では、できたてのラーメンや揚げたてのカレーパン200食が振る舞われ、訪れた市民は温かい食事を前に笑顔になっていた。

千葉さんはボランティアに当たって、発災から間もなく2カ月が経過する中で、行政による支援が遅々として進まないと指摘する。

「被災した人は床上浸水によって、水没した家の2階に住んでいる。台所や風呂場が使えない家庭が多いが、なかなか知ってもらえていない」と現状を訴える。

業者による家屋の改修もままならず、このままの環境で被災者が年を越してしまうと強調。「少しでも皆さんのお役に立ちたい」と語った。

※cafeのeは、正しくはアキュート・アクセント付き

写真は、ラーメンをほおばる女の子=7日昼(クリックで拡大)

■県青年・女性漁業者交流大会開かれる 本県沖の取り組み披露

県内の青年、女性漁業者が日ごろの研究や実践活動の成果を発表する「県青年・女性漁業者交流大会」が6日、小名浜魚市場で開かれた。県漁業協同組合連合会(県漁連)主催、県後援。

市漁業協同組合(市漁協)と相馬双葉漁業協同組合(相双漁協)の青壮年部所属の青年4人が、東電福島第一原発事故に伴う風評払しょくと本格操業に向け、試行錯誤を続ける本県沖の漁業の実情や漁業者の取り組みを披露した。

同大会は、広く研究討論を深めることで漁業技術と地域活性化に関する知識を深め、活力ある地域沿岸漁業の形成と振興を図ろうと、毎年行われている。

市漁協青壮年部からは今年、勿来支部の高木完昇さん(42)と、四倉支部の高木航さん(24)が登壇。

完昇さんは昨年に引き続き、かつての主力漁業だったシラス漁(船びき網漁)の漁獲量が震災後に激減したことを背景に、代替え漁として勿来支所が平成27年より取り組んでいるヒラメの釣り漁業の推移と波及効果、課題や問題点を説明した。

全漁業種におけるヒラメの漁獲量は震災前の8割程度にとどまっているが、活魚販売の付加価値を切り拓(ひら)いたことにより、漁獲量、漁獲金額ともに釣り漁業の占める割合が増加している現状を解説。

本県の沿岸漁業を代表し、ブランド力の高いヒラメ資源の有効活用を強く訴えた。

一方、航さんは原発事故で漁師の父の後を継ぐことを見送り、一時は東京都内で勤務したが、「父と一緒に船に乗りたい」という一心で帰郷し、漁業に従事したいきさつがある。

漁業復興にかける思いは人一倍強く、四倉支所、県漁青連いわき支部の仲間とともに各種PRイベントや技術研修、浜の起業家養成塾に参加する姿を紹介した。

審査員は県水産課の斎藤健課長をはじめ県職員と漁業関係者9人が務め、発表内容や表現力を審査した結果、完昇さんは昨年と同様、第2席の優秀賞、航さんは優良賞を受賞した。

最優秀賞は、福島第一原発の目と鼻の先にある浪江町・請戸で奮戦する漁業者の姿を発表した、相双漁協の小野田隆一さん(40)の「未来へつなぐ港―令和(ゼロ)からの挑戦―」が選ばれた。

小野田さんは県代表として、3月に都内で開催される「第25回全国青年・女性漁業者交流大会」に出場する。

■あす小浜漁港で朝市 常磐もの販売 海鮮汁振る舞いも

市漁協主催の「小浜漁港朝市」が8日午前9時から、小浜町渚の小浜漁港で開かれる。

朝市は「新鮮で旬なお魚を味わおう!」と銘打ち、午前9時からいわき市沖で取れた常磐もの≠フ販売、同9時半から漁師による仕分け作業「魚外し」が行われる。

また、同10時からは海鮮汁の振る舞い(なくなり次第終了)、いわき市沖で水揚げされたタコに触れる「親子タコゆで体験」(先着10組)も実施。会場では、地域の食材による出店も軒を連ねる。

■この人は誰? 窃盗・暴行の男を起訴 逮捕当初から身の上明かさず

いわき市平のコンビニエンスストアで11月、万引後に女性従業員が暴行を加えられた事件について、地検いわき支部は6日、男を窃盗と暴行の罪で起訴した。

いわき中央署は男を事後強盗の疑いで逮捕していた。同署によると、男は逮捕されて以降、あいさつなどを除いて、自らの身の上を一切語っておらず、現在も氏名・住居・職業・生年月日いずれも不詳のままだ。

起訴状などによると、男は11月17日午前9時半ごろ、同市平のコンビニエンスストアで、パン1袋(103円相当)を万引した後、呼び止めた女性従業員を突き飛ばして転倒させたとされる。

通報を受けて駆けつけた署員が、現場近くで男を発見したが、職務質問の段階から、一貫して話をしなかったという。

男の年齢は50〜60歳代とみられるが、身元が分かる所持品に加え、前科・前歴の該当も無く、同署幹部は「近い年齢の行方不明届にも一致しない。本当にどこの誰なんだろう」と首をかしげている。