2019年11月15日(金)

■陸自 平四小での入浴支援終える 延べ1万3千人超に癒やしを

陸上自衛隊は14日夜、台風19号と続く大雨に伴い、いわき市で行ってきた入浴支援を終了した。入浴支援を担当する部隊は10月17日から、夏井川が決壊し、広い範囲が浸水した平下平窪地区の平四小に派遣され、自宅で風呂に入れない市民に癒やしを与えてきた。

10月21日の998人をピークに、平浄水場が復旧した後は訪れる人も減少傾向にあったが、最終日の14日には328人が足を運び、今までの支援に感謝の思いを伝えた。期間中の利用者は延べ1万3334人だった。

最終日の14日、入浴支援を担当したのは、9日から任務に就いた神町駐屯地(山形県東根市)。若い隊員も多いとあって、子どもたちの格好の遊び相手となっていた。

その中でも「アニキ」と呼ばれていたのが、本戸伸治2尉(35)。20歳代の隊員に負けず劣らず、子どもたちと積極的に触れ合い、自然とニックネームが付けられていたという。

「みんなの笑顔を見ていると、こちらが元気になります」と本戸2尉。平四小の校庭が浸水によってでこぼことなっている上、公園は水害ごみの置き場に使われ、子どもたちは思いっきり体を動かす機会が少ないため、隊員と全力でじゃれ合っていた。

子どもたちの中には、ほぼ毎日通いながら、隊員と一緒に受け付けをこなす「看板娘」もいた。平四小3年の国井咲希さん(8)だ。自宅アパートは1階で、1メートル浸水する被害にあった。

国井さんは「こうして来てくれてうれしかった。あしたから、お風呂が無くなってしまうのはさみしい」とぽつり。父・善秋さん(60)が入浴している合間、惜しむように隊員と遊びやおしゃべりに興じていた。

[出発する隊員に復旧・復興の決意新たに]

平四小の校庭では15日、自衛隊の見送り式が開かれた。2、3年児童142人、あかい幼稚園の園児45人に加え、地域住民が参加し、これまでの活動に敬意を表した。

清水市長も出席し、発災直後から、救命・救助活動や水害ごみの撤去作業、入浴場所の提供と、多岐にわたる支援を行ってきた自衛隊員をたたえ、「特に入浴支援では、『久しぶりにお風呂に入れた』との喜びの声が、市役所にも寄せられた。心からお礼申し上げる。今後もそれぞれの部署で活躍してほしい」と述べた。

見送り式では、園児からメッセージボードが贈られたほか、児童からは花束が贈呈され、車両が出発すると、他の学年の子どもたちもベランダから身を乗り出して、元気よく「ありがとうございました」の言葉を繰り返していた。

思わず涙ぐんでしまう住民の姿もあり、平四小を後にする隊員を前に、誰もが復旧・復興を進める決意を新たにした。

なお市では、引き続き入浴支援が必要な市民に向け、いわき新舞子ハイツや、市健康福祉プラザ「いわきゆったり館」まで、無料のバスを運行している。

写真は、見送りに合わせて贈られたメッセージボード=15日昼(クリックで拡大)

■片岡(東日本国際大) 日ハムと仮契約

プロ野球新人選択(ドラフト会議)で、日本ハムにドラフト7位指名された東日本国際大の片岡奨人外野手(4年・札幌日大)が14日午後、平鎌田の同大で仮契約を結び、契約金2000万、年棒700万円(金額は推定)で合意した。

会見に臨んだ片岡は「一日も早く1軍のステージで頑張れるよう、自分を研究し、レベルアップしたい」と抱負を述べた。背番号は球団本拠地の札幌市で23日の入団発表時に発表される予定。

まもなく東日本国際大出身の第2号のプロ野球選手が誕生する。仮契約を終え、片岡はさらに表情を引き締めた。色紙に、札幌日大高時代のチームスローガン「挑戦」の2文字を力強く記した。「プロ入りすることもいわば挑戦。一日も早く1軍に上がれるよう頑張りたい」と決意を述べた。

台風19号の影響で、大学や選手寮などが断水となったが、ドラフト会議直後の10月下旬から、来春、南東北の王座奪還を目指す後輩たちとともに本格的に練習を始動した。

プロで通用する体づくりをしようと、平日は約3時間にわたり、30分走などで基礎体力を強化。土、日曜はノックなどで汗を流す。課題の打撃強化もおろそかにしない。年明けの新人合同自主トレで成果を見せるつもりだ。

6日には千葉県鎌ケ谷市の球団施設を見学。きれいに生えそろった芝生に感激した。高卒ルーキーで入団1年目から1軍で活躍した清宮幸太郎選手(20)らと対面。「テレビで見ていたメジャーな方々と一日も早くプレーできるよう、チャンスをつかみたい」と意気込んだ。

会見には大渕隆スカウト部長、白井康勝スカウトも同席。大渕スカウト部長は「伸びるのはこれから。伸びしろを期待している。性格もプロ向き」と高評価した。

白井スカウトがスカウト活動に本腰を入れた一戦は3月30日、宮城県の仙台市民球場で行われたTDKとの東北社会人大学交流戦。片岡は自慢の俊足でセーフティーバントを決めると、次打席には中前打を放ち、主将としてチームを鼓舞した。「足、肩はすばらしいものを持っている」と絶賛しながらも、「バッティングもいいものを持っているが、さらに期待したい」と成長を促した。

この日、市内は枯れ葉が舞う強風となった。古里・北海道では雪の便りも。白井スカウトは10月25日の大雨となった指名あいさつの日を思い出し、「何か持っている選手。入団会見の日は大雪になるかも」と期待を込めて苦笑した。

2年連続で教え子をプロ球界に送り出した仁藤雅之監督は「これで自分はお役御免」と一安心。指揮官が最も心配していたのが、片岡のモデルのようなスリムな体形だ。

「あれではプロでは通用しない」と仁藤監督は苦言を呈していたが、会見の席上、片岡は新人合同自主トレまでに80キロ台に増量することを約束。プロ1年目からさらにパワーアップした「道産子スラッガー」の姿が拝めそうだ。

写真は、仮契約を済ませ、地元球団での活躍を誓う片岡=14日夕方(クリックで拡大)

■「Jヴィレッジを赤く染めろ」 いわきFCサポーター のぼり旗設置で地域CL機運高める

20日からJヴィレッジスタジアム(広野町)で、日本フットボールリーグ(JFL)昇格を懸けた「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)」の決勝ラウンドが始まり、いわきFCも出場をする。

これに合わせ、いわきFCのサポーター有志団体「いわきFCサポーター団体連絡協議会」が15日、市内各地に決勝ラウンドを告知するのぼり旗を設置し、本番に向けての機運を高めた。

いわきFCは8〜10日、秋田県にかほ市での地域CL1次ラウンドを突破し、決勝ラウンドに駒を進めた。決勝ラウンドには4チームが挑み、上位2チームに入ると、JFLに昇格できる。

のぼり旗は高さ1・8メートルで、試合の日程などを伝える2種類が用意され、チームカラーの赤色にちなんで、「Jヴィレッジを赤く染めろ」の文字が添えられている。JRいわき駅や市内の主要道路など、21カ所に設けるという。

会長の野田昇さん(57)は「いわきFCの飛躍を市民に浸透させていきたい。ぜひ市民一丸となって、Jヴィレッジで応援しましょう」と呼びかけた。

16、17日には、公開でチャント(応援歌)を練習する会も実施する。一般の人向けには歌詞カードも配布し、誰もが参加できる機会とする。

時間は午後1〜3時。会場は、小名浜港のアクアマリンパーク(イオンモールいわき小名浜南側)。練習会には、いわき市ゆかりの書家・金澤翔子さん揮ごうの横断幕「一戦必勝」も飾られ、来場を後押ししていく。

■台風19号 通行止め続く国道289号 住民は早期開通に切実な声

台風19号の影響により国道289号では大規模な土砂崩れが発生し、ひと月がたった今も田人町旅人字江尻地内の一部区間で通行止めが続いている。

地元では日常生活、経済活動に大きな影響を与えており、積雪、凍結が懸念される冬場に向け、住民からは土砂の撤去と片側1車線の早期開通を願う切実な声が上がっている。

関係機関の住民説明会が14日夜、現場近くの入旅人集会所で行われ、現状報告と今後の見通しが示された。

国、県の関係機関によると、3桁国道は本来管理する県が災害復旧を行うが、災害規模が大きいために国の直轄権限代行事業に決定。本格的な復旧作業に向け、測量と安全な箇所からの土砂撤去作業が始まっている。

しかし土砂崩れは、辺栗トンネル頂部側から田人おふくろの宿手前の約800メートル範囲で5カ所発生しており、最大規模で幅5メートル以上、長さは100メートル以上、全体の流出量は約5千立方メートルにも及ぶ。

順調に進めば1日200立方メートルの撤去は可能というが、土砂は平成26年の広島豪雨災害で注目を集めた水に弱い土質の「まさ土」。

同所では以前も土砂崩れが発生しているため、二次災害など作業の安全を考慮せねばならず、さらに道路損壊部分の把握と補修、天候など複合的な要因が見通しを難しくしているのが現状だ。

いずれの土砂崩れも沢をすべるように土砂が削れ落ち、5カ所に土のうを二重三重で積み重ねるのが現実的な対処方法となるが、最少で7〜800袋は必要となることから、作業終了の日程は明言できないという。

一方で住民たちは、旅人地区から市田人支所のある黒田地区を結ぶ、県道旅人・勿来線、田人ふるさと林道1号線を主な迂(う)回路として利用しなければならず、通勤通学をはじめ日常生活に大きな不便を来している。

迂回路は冬場、凍結や積雪で深刻な事故や立ち往生が懸念され、さらに県外からの利用客も多い田人おふくろの宿では、災害により利用客が半減。11月に入り利用客は回復傾向にあるというが、宿泊キャンセルは続いている。

説明会では「片側1車線でもいいから一日でも早く通してほしい」といった声が相次ぎ、中には声を荒げる住民も。磐城国道事務所の菅沼真澄所長は「大まかに年内には何とかしたいが、約束はできない」と説明するにとどまった。

また、現場の森林は国有、民有林に分かれ、砂防ダム、斜面保護など抜本的な対策を打つためには地権者の同意を得、保安林に指定する必要があり、磐城森林管理署は住民に理解を求めた。

このほか住民からは、迂回路の案内看板の改善、積雪、凍結に向けた対策に万全を期すよう求める声が上がった。

説明会は市、田人地区区長会主催し、県勿来土木事務所、磐城国道事務所、磐城森林管理所、県いわき農林事務所が現状報告した。