2019年11月12日(火)

■台風19号上陸1カ月 いまだ多くの事業所苦境 被害額は200億円以上か

いわき市に甚大な被害をもたらした台風19号は、12日で上陸から1カ月となった。生活インフラの復旧は進んだが、夏井川などの氾濫・決壊によって、いまだ多くの事業所が苦境に立たされている。

こうした状況を踏まえ、いわき商工会議所の小野栄重会頭が12日、市役所を訪れ、清水市長と面会し、緊急かつ重点的な支援策を講じるよう、要望書を提出した。

要望書では3つの項目を立てた。1つ目は、「中小企業組合等共同施設等災害復旧事業(中小企業等「グループ補助金」)の補助対象事業者について」だ。

グループ補助金は宮城、福島、栃木、長野の4県で、中小企業がまとまって復旧に当たる際、費用の最大4分の3を支援する制度。上限は15億円だが、東日本大震災を踏まえ、宮城、福島県は5億円まで定額補助する。

ただし震災時と異なり、対象は中小企業となっている。いわき市には規模こそ大きくないが、大企業の子会社として、みなし大企業に該当する事業所もあるが、今回はグループ補助金は適用されない。

数十億円の被害も出ている中で、いわき商工会議所としては、適切な対応を求めている。

2つ目は、「多大な被害がおよんだ、被災した棚卸資産に対する支援について」。市内では河川の氾濫・決壊に伴い、スーパーマーケットの商品や、工芸専門店の正月用品などが水没しているが、国や県の制度では救済が難しい現状にあるとし、重ねての支援を盛り込んだ。

3つ目は、「事業継続奨励金など新制度の創設について」。いわき商工会議所では10月15日から、市内200カ所以上の事業所を巡回調査し、被害の実態を明らかにしてきた。機械の水没が尾を引いて、クリーニング店や住宅用品店などで、これを機に廃業を検討していることも分かった。

いわき商工会議所の担当者は「どうしても小規模な事業所が中心。生活に密着し、地域を支えている人たちだが」と、厳しい表情を浮かべる。

そうした点から、市に対し、少額でも事業再建につながる独自の制度を新設するよう要請した。

要望書の提出に当たって、小野会頭は「被害額は200億円以上に上るとみられる。在庫や機械の水没という事態は、東日本大震災の時より深刻だと思う」と指摘する。

清水市長は13日、台風19号や続く大雨の被害に関して、上京して内閣府や経済産業省、総務省の関係者に要望する予定で、いわき商工会議所の意向を伝える考えを示した。閣僚との懇談も調整中という。

写真は、清水市長に要望する小野会頭ら=12日午前(クリックで拡大)

■メバチマグロなど24トン水揚げ いわき海星高の航海実習 ハワイ沖で漁獲

いわき海星高(松本善法校長)の練習船「福島丸」(総トン数665トン)が11日、61日間に及ぶ第2次航海実習を終えて小名浜港に帰港し、実習生たちがハワイ沖で漁獲したメバチマグロなど約24トンが水揚げされた。

今回の遠洋航海実習には、本科・海洋工学科の2年生30人と専攻科・海洋、機関両科の1年生15人が参加した。海技士免状の取得に向けた海洋観測や操船、機関技術を学びながら、ハワイ北沖で25度に及びマグロはえ縄漁を行ったほか、地元の高校、ホノルル福島県人会と交流会を重ねた。

ハワイを出港したのは10月25日で、実習生たちは久しぶりの帰郷に感慨深げな表情を浮かべ、思い出を振り返りながら次々と水揚げされる冷凍マグロなどを見守った。

マグロは荷受け業者の山菱水産(本社・小名浜字芳浜)を経由し、今回も「福島丸ブランド」として市内のスーパーなどで販売されるという。

写真は、生徒たちが見守る中、水揚げされる冷凍のマグロ=11日(クリックで拡大)

■子どもたちの元気な声戻る 平赤井・はと保育園再開 台風19号で浸水被害

台風19号によって夏井川が氾濫・決壊し、浸水した平赤井のはと保育園が11日、およそ1カ月ぶりに再開を果たした。園舎は3メートル近く水没し、送迎バスや遊び道具も使い物にならなくなったが、園長の坂本佳友さん(62)や保育士の尽力で、再び子どもたちの元気な声が戻った。

ただ園にいるのは0〜2歳児。園の一部を専門業者が消毒し、床の張り替えも行ったが、残りの3〜5歳児は市の協力で、休園中の四倉第四幼稚園を間借りする。仮設の園舎についてはこれからだ。

もちろん課題は山積する。坂本さんは「行政の窓口を一本化してくれるとありがたい」と話す。園内には泥だらけの書類などもいまだ残るが、子どもたちのため奮闘している。

市によると、台風19号の影響で、市内37カ所の幼稚園や保育園などが休園となり、はと保育園が最後まで残っていた。

■磐越東線16日に全線再開へ 台風19号からの復旧作業続く

JR東日本仙台支社は11日、台風19号に伴い、不通となっている磐越東線いわき―小野新町(小野町)駅間について、16日に運転を再開する予定と明らかにした。磐越東線は小川町や川前町で、盛り土が流されたり、線路に土砂が流出したりする事態が生じ、復旧作業が続いている。

代行バスは江田、川前駅を通過するため、沿線の住民に加え、観光需要からも再開に対する期待は大きい。

磐越東線は6日、小野新町―郡山(郡山市)駅間で、運転見合わせが解消した。いわき―小野新町駅間は、15日まで代行バスを設けている。

代行バスのうち、いわき―小川郷駅間は1日上下3本、いわき―小野新町駅間は同上り4本・下り3本(高速道で直行、うち上下1本は夏井駅も止まる。江田、川前駅には止まらない)。いわき駅の乗り場は、北口ロータリーとなっている。

道路事情によって、列車への乗り継ぎができない場合もある。

■あす午前11時から犠牲者に黙とう 台風19号犠牲者悼み

市は13日午前11時から、台風19号によって亡くなった市民に向け、哀悼の意をささげる黙とうを実施する。清水市長が11日夕方、臨時の市長記者会見で明らかにした。

いわき市では10月13日未明、夏井川などが決壊し、浸水によって8人が犠牲になったほか、同日午前に1人が、救助中のヘリコプターから落下して死亡している。

黙とうは市役所と各支所、平窪、赤井の現地対策事務所で行われる。

■水害ごみ 生活圏から年内撤去へ

市は11日、台風19号で生じた水害ごみについて、年内にも生活圏から撤去する見通しを示した。市では地域に設けられた臨時の集積所から、小川市民運動場などの仮置き場に搬出しており、建設業団体や市消防団の協力も受けて、運び出しを進めている。

市によると、平・平窪や赤井、小川に、21カ所の大規模な臨時の集積所がある。

■東日大昌平 13年ぶり優勝飾る 高校新人サッカーいわき地区大会

令和元年度県高校新人体育大会サッカー競技いわき地区大会(いわき地区高体連主催)は11日に最終日を迎え、いわきグリーンフィールドと21世紀の森公園多目的広場で、決勝と敗者復活トーナメント準決勝2試合、第3代表決定戦を行った。

決勝は東日大昌平が2―0でいわき光洋に勝利し、平成18年度大会以来、13年ぶりの優勝を飾った。

決勝は時折、強い雨が降りしきる悪コンディションの中、それをものともせず、東日大昌平が70分間を支配。前半24分、DF柴田祐慈(1年)がコーナーキックを頭で合わせ、先制ゴールを奪った。

なおも攻撃の手を緩めず、後半28分、途中出場でMFの位置に入った阿部雄仁主将(2年)がDF水野希(1年)のセンタリングを右足で合わせ、ゴール左隅にダメ押しの1点を加えて、逃げ切った。

2年ぶりの頂点を狙ったいわき光洋は、MF粟野翔馬主将(2年)が相手GKとゴール前で一対一の場面をつくるなど、積極的に攻め上がった。だが、今大会無失点の東日大昌平の堅守を崩せず、決勝で力尽きた。

第3代表決定戦は磐城桜が丘がDF今西龍馬(同)がフリーキックで2ゴールを決めるなどし、本戦準決勝で敗れた平工業に4―2で雪辱。敗者復活トーナメントを勝ち上がり、残り一枚の県切符をもぎ取った。

優勝校の東日大昌平、準優勝校のいわき光洋、第3代表決定戦を制した磐城桜が丘の3校は23日、いわきグリーンフィールドをメイン会場に開幕する県大会に出場する。