2019年11月8日(金)

■小名浜上神白 問題指摘の太陽光 10月25日の大雨で家屋に土砂が

東電福島第一原発事故に伴い、いわき市にも整備された太陽光発電施設を巡って、一部の業者による法令違反の開発が問題視されていたが、小名浜上神白の現場では、10月25日の大雨によって、隣接する家屋に土砂が流れ込む被害が生じた。

住民の70歳代男性は危険を察知し、土砂崩れの前に、小名浜武道館に避難していたが、「これは自然災害ではなく人災だ」と憤る。

ここは都内の業者が、一部の伐採届のみしか提出せずに、市が必要とする計画も無いまま、ソーラーパネルを設置した場所だ。市は再三にわたって中止するよう要請したが、売電まで始めた経緯がある。

急な傾斜に排水も不十分とあって、小規模な崩落を繰り返していた。ただ太陽光発電そのものが投機商品に成り下がり、最初の業者から権利が転売され、責任の所在も二転三転する事態に。

住民の男性は業者に加え、市や所管する経済産業省に何度も申し入れをし、のり面の補修が進められている矢先だった。

[ここで自由に生きていく権利がある]

原発事故を踏まえ、国が進めた小規模太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)のしわ寄せを受ける結果となった訳で、市の担当者も「権限が限られる中、業者を指導してきたが」と語る。

一方で、住民の男性からの一報で、市はすぐに業者に連絡を入れ、早急な対応を強く求めた。業者も土砂崩れに対して見舞金を渡しているが、住民の男性は「ここで自由に生きていく権利がある。今後の生活の見通しが立たない」と苦しい胸の内を明かす。

のり面の補修にも、不信感を募らせる。崩れた土砂の中から、以前に使用したとみられるブルーシートが露出した。

家屋に流れ込んだ土砂の影響で、夜は居間での就寝を余儀なくされている。いつまた大雨が降るかも分からない。経済産業省も事態を見守る。

市の担当者は「住民の方が、安心して暮らせる環境が何よりも一番。可能な範囲で最大限、業者の監督は継続していく」と強調した。

写真は、土砂崩れが起きた翌日朝の現場の様子。右上にブルーシートが露出している(住民の男性提供=クリックで拡大)

■県立高入試 新制度「特色選抜」枠決まる 推薦にも学力検査 磐城桜が丘は傾斜配点

県教委は7日、来春から新たに始める県立高の入試制度として、「前期選抜」のうち、特色選抜の募集定員枠を公表した。県立高入試では現行の自己推薦に当たる「1期選抜」、一般入試に当たる「2期選抜」を統合し、「前期選抜」と改め、すべての生徒に学力検査を課す。

さらに「前期選抜」は志願してほしい生徒像に応じた特色選抜、学習成果を総合的に見る一般選抜に分けられる。定員に満たない場合の「3期選抜」は「後期選抜」に変わる。

特色選抜は1期選抜と同じく自己推薦の形を採っているが、学業や部活動に力を入れたり、リーダーシップを発揮したりと、学校ごとに志願してほしい生徒像を設定。定員のうち、原則として5〜50%の間で募集の枠を規定している。

いわき市の全日制・定時制計16校のうち、磐城、勿来、勿来工業の全5学科で最少の5%、平工業は全5学科で最多の50%で設定した。

学力検査は5教科250点満点とするが、磐城桜が丘では傾斜配点を採用し、文系は国語と英語、理系は数学と英語の得点をそれぞれ加え、350点満点としている。

その他の内容も、面接も個人であったり集団であったり、小論文を設けるか否かなど、学校ごとに大きく異なる。

前期選抜は来年3月4日に特色選抜、一般選抜ともに、学力検査を実施し、続く5、6日の2日間で、特色選抜の小論文や実技を行う。後期選抜は同24日。

県教委では、新制度に移行した理由に、1期選抜の日程が2月のため、内定者の卒業までの学習意欲維持が課題だったほか、志願してほしい生徒像を通じた意欲の高い出願、円滑な中・高接続などを挙げている。

いわき市の特色選抜枠は表の通り(クリックで拡大)。

■台風19号 罹災証明書1507件交付 清水市長「1日も早い発行を」

市は8日、台風19号と続く大雨に伴い、被災した市民が申請した「罹災(りさい)証明書」について、7日時点で1507件の交付を済ませたと明らかにした。またいずれも6日までに、申請件数は1万2549件で、家屋の調査は9530件(4373棟)で完了しているとも公表した。

清水市長は8日午前、臨時の市長記者会見で、「生活再建のため、一日も早い発行に臨んでいく」と強調した。

罹災証明の申請は10月19日から始まり、発行は1日から進められている。交付済みの内訳は、全壊(家屋の流失や1・8b以上の床上浸水)36件、大規模半壊(1b以上1・8b未満の床上浸水)326件、半壊(1b未満の床上浸水)1057件、一部損壊(床下浸水)88件となっている。

市では家屋の調査を踏まえ、おおむね2〜3週間で、罹災証明書の発行ができる見通しを示す。

■磐城桜が丘が白星発進 きょう開幕 いわき地区高校新人サッカー

県高校新人体育大会サッカー競技いわき地区大会(いわき地区高体連主催)が8日、新舞子フットボール場で開幕した。1回戦2試合が行われ、開幕試合では、磐城桜が丘が湯本に2―0で勝利し、白星発進を切った。

大会には、市内14校・10チームが出場。8〜11の4日間、トーナメント戦で優勝を争う。大会2日目の9日、同フットボール場と21世紀の森公園多目的広場で2回戦4試合が行われ、4強が出そろう。

大会3日目の10日から、いわきグリーンフィールドと同広場で実施。同日は本戦の準決勝2試合のほか、敗者復活トーナメントの1、2回戦、準決勝を行う。

大会は11日に最終日を迎え、決勝と第3代表決定戦を行い、県大会出場3チームが出そろう。決勝はいわきグリーンフィールドで午前11時半試合開始予定。

上位3チームは23日、いわきグリーンフィールドをメイン会場に開幕する県大会に出場する。

■県議選連載「水害被災の中での選挙戦」 取りこぼし許されぬ最終盤

10日投開票の県議選に向け、いわき市選挙区(定数10)は、現職10・新人2の計12人が激戦を繰り広げている。各陣営とも台風19号と続く大雨による被災もあって、投票率は伸び悩むとしながらも、前回候補者の16人から4人減っており、当選ラインは高まるとし、危機感を募らせている。8000票は必要か。

当落は数百票差で決まるとみられ、一票の取りこぼしも許されない。(敬称略。党ごとに並びは届け出順)

自民は4人の現職が議席の維持に努める。鈴木智=2期=は小名浜、矢吹貢一=同、青木稔=8期=は平、坂本竜太郎=1期=は勿来を地盤とするが、関係する市議とともに、新人の急逝によって空白となった常磐をはじめ、市内問わず票の上積みを図っている。

最終盤に鈴木と矢吹は集会を設けた一方、青木と坂本は遊説に力を入れる。最終日には法相の森雅子が応援に入る予定にもなっており、国とのパイプも強調する。

公明は悲願の2議席獲得目指す。得意の組織力に、代表の山口那津男はじめ党幹部も動員。新人の真山祐一は内郷を中心に北部、現職の安部泰男=2期=は勿来を中心に南部を駆ける。機関紙では真山を知名度不足、安部を圏外とまで表現し、支持層を鼓舞している。

労組系の票の行方も注目される。立憲民主現職の古市三久=3期=は平、国民民主現職の鳥居作弥=1期=は勿来を軸に、それぞれ党首級や閣僚経験者も来市し、支持拡大を図っている。古市には野党系の市議、鳥居には元衆院議員も付く。

これに社民は新人の狩野光昭を立てており、関係する労組と合わせ、市内全域で政策の浸透に臨んでいる。

共産は現職の2議席死守が至上命題。吉田英策=1期=は内郷、宮川絵美子=3期=は勿来を拠点に、強固な組織力を発揮している。委員長の志位和夫らも来市する中、選挙戦は横一線との新聞折り込みまで挟み込んだ。

無所属現職の西丸武進=6期=は常磐から、全市に支持を広げる。社民時代からの応援と、元衆院議員が支える。

いわき市選挙区(定数10―12)※届け出順

狩野 光昭 67 社新

鈴木  智 46 自現

真山 祐一 38 公新

吉田 英策 60 共現

矢吹 貢一 64 自現

青木  稔 73 自現

安部 泰男 62 公現

鳥居 作弥 45 国現

坂本竜太郎 39 自現

西丸 武進 75 無現

古市 三久 71 立現

宮川絵美子 73 共現